30歳既婚、HPVワクチンを接種した方がいい?
世界的にはHPVワクチンの対象は9〜14歳の女性となっている。
可能なら同じ年代の男性にも接種(ジェンダーニュートラルワクチンとして)が広がりつつあるが女性に比べると遅れている(主にベネフィットに対するコストの問題だ)。
加えて、先行国では10代の若者に接種対象を広げている国もあるが、20代に接種をおこなっている国は多くはない。公的・保険をなどで20代中盤まで無条件に接種をおこなっている国はアメリカくらいのものになる(これも主にベネフィットに対するコストの問題だ)。
・ワクチンで、HPV関連癌やコンジローマを予防することができる
・HPVには主に性交渉を通じて感染している
・性交渉をするなら誰でも感染するありふれたウイルスだ
30代なんて、性交渉の機会も多いと言っていいだろう。既婚者もパートナーと性交渉をくりかえす。感染リスクも高そうだ。これを聞くと、自費で接種することになっても『接種した方がいいのだろうか』と考えるのが普通だ。
接種した方がいいのか?意味があるのならなぜ、公的には補助されないのだろうか?
HPVは持続感染をするウイルス。そして長い年月をかけてがんを発症させている
HPVの感染から発がんまでの自然史を調べてみると『感染のピーク』は新しいパートナーを持つことが多い若い世代に集中している。初めてのパートナーを持ち性的にアクティブになって比較的簡単にHPVに感染してしまい、5年以上・通常は15〜20年かけてがんとして発症している。
子宮頸がんの発症ピークである『30代・40代の子宮頸がん』の原因となるHPVに感染したのは10代後半から20代ということになる。ワクチン接種を思い立った今”30歳”からみれば過去の話だ。
パートナー間のピンポン感染は(あったとしても)発がんなどの病態に影響を与えない
背景には、HPVが持続感染するウイルスであるということ。そのため”一度治ってパートナーから再感染するピンポン感染”自体が想定できない。持続感染しているので『感染がなくなる形』では排除・治癒しないから、再感染できない。
実際には
①HPV陽性・異形成罹患の患者に対して、性交渉の抑制など感染させること・再感染することに対する対応をとっていないこと。ピンポン感染(再感染)が存在するなら対応するよねぇ。
②『既感染者にはワクチンの効果はない』と強調されるている。ピンポン感染が存在して意味があるとすれば、パートナーの居る既感染者こそワクチン接種の対象になるべきだ。そうでないことが医学上のコンセンサスです。
③既感染者に対する異形成発症予防効果が臨床試験で確認されなかった。ピンポン感染に意味があるのならその分の効果は確認されるはずだ。
同じパートナーと性交渉を繰り返すことは追加のリスクとはなっていないということだ。性交渉の回数がリスクというのは正しくない。
将来、子宮頸がんになるとして原因となるHPVには30歳までに感染してしまっている
ざっくりワクチンの対象としては手遅れということだ。アメリカでの試算によると(ワクチンの対象をどこまで広げるかの結論に重要)、子宮頸がんの原因となるHPVに『25歳までに50%・30歳までに75%が』感染しているとされた。集団の平均で見た場合、30歳にワクチンを接種することは、効果の25%しか期待できないことになる。これを受けて、アメリカの判断は20代中頃までであれば条件なしに接種推奨になる。
日本の場合はどうだろうか。思春期以降性的活動性が上がるにつれ集団ないのHPV感染率は上がるのだが①高校一年生まで定期接種行っていて、これは世界平均からすると4歳ほど遅くなっている。平均初交年齢を高めに見積もっている(感染機会が遅くなる)ように見える。②2000年以降に初交年齢の上昇が観察されていることはこれを支持するかもしれない。実際、20代30代の若い集団の子宮頸がんが『ワクチンの効果抜きに』減少傾向があることもこれを支持する可能性がある。その分キャッチアップ接種に期待できる部分が大きくなるということだ。
話がずれた。30代の話だ。30歳で過去に一定の性的活動性があったのなら、既に感染しているし、その分ワクチンの効果・利益は目減している。
子宮頸がん発症のピークである50歳までの子宮頸がんは20代までの感染から発症している
発症に普通20年くらいかかっているから当然の話🐰
50歳までに発症する癌の原因であるHPVにはワクチンの接種を思い立った30歳の時点で既に感染していることになる。もちろん、ワクチン接種後に感染するHPVにはワクチンは効く。でも、30歳以降それが原因となって癌に発症するとしたら50歳以降の話になる。
30歳のワクチン接種では50歳までの子宮頸がん罹患率にインパクトを与えることはない
では、ワクチン接種後に感染が起こるとしたら…
新しいパートナーを持つこと
現在のパートナーが新しいパートナーを持つこと
になる。これがCDCの言う『性交渉を介して新しいHPVに感染する可能性がある場合推奨する』時の具体的な意味になる。実際は2は考慮しない(わからないから、考慮したければしても構わない)。
実際はワクチンを接種したとして、次に感染機会があるのはいつだろうか(予想できるだろうか)。感染機会から20年間は子宮頸がん罹患率に影響を与えないと考えていい。
・その場合30歳(特に既婚)からの10年間の感染機会は多くない。20代の10年間と比べると多くない。やはりリスクは過去にある。
・とは言っても『今後、新しいパートナーを持つかどうか、感染機会があるかどうか』を十年以上見通して確実に言える人(希望は言える)は存在しない。
CDCが26歳を超える男女に対して『HPVワクチンを接種する利益は多くの人にとっては大きくない』ため一律には推奨しないとしながら、運用上は(保険によるだろうが)希望者には接種している場合もあるのはこのような理由だろう。
まとめ『30歳、HPVワクチンをどうしよう?』
接種した場合期待される利益は『過去の性的活動性が少ないほどあり』・『未来の感染リスクが高いほど大きくなる』
①過去の感染リスクの観点からは、性的経験がなければ最小なので文句なしに接種推奨。過去のリスクの程度においては、通算パートナー数が片手に収まるのであればワクチンの利益は0ってことはないだろう。問題は、ワクチンの必要性に関して評価する方法『検査』が存在しないことで、そのため接種の判断については、過去のことは考えないとする(でも実際はワクチンが効かない理由のほとんどはこれね)。
②そのため、ワクチンの接種を考える場合は『将来のリスクのみ』を考える。未来のリスク・新しいパートナーを持つ(可能性がある)場合、リスクが発生しワクチンの利益が発生する。この場合もパートナーのリスクについては考えない。科学的に評価する方法がないため(①を差し引くと大きくないし)、自由に考えてもらったらよく。あると考えればあるし、あるかもしれない程度でも本人がよければそれでいい。
このように26歳を超えてのHPVワクチン接種は、集団全体で見た場合費用対効果上一律に正当化されることはない。つまり、公的な補助の対象となることはない。個別のケースで利益が大きく変動する上にそれを定量する方法がない。集団の平均で考えることしかできず、コストを負担して自己判断になる。コストを負担しているので、自由に判断してもらっていい。
ちなみに🐰さんは、2010年日本でワクチンが利用できる時になった時、30代で子供が2人いました。夫婦共に接種しないで即決です。接種するならなるべく早い方がいいです(待っている間に感染したら意味がさらになくなります)から『判断するなら今すぐ』あとは忘れてしまうことです。今年一年迷うようなら忘れていいです🐰
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