HPV感染予防とコンドーム

コンドームに予防効果があるするなら(ほんと?)ワクチンを接種すればいいじゃない🐰そちらがよっぽど確実だ
アマミノクロウサギ 2025.04.29
誰でも

主に性的接触を介して感染するHPVによって起こる疾患として①尖圭コンジローマ②HPV関連がん、そして③前がん病変としての異形成(子宮頸部・外陰・陰茎・肛門)が挙げられる。

避妊だけではなく多くの性行為感染症のリスク軽減として『コンドーム』の適切な使用に異論はないだろうが、同様の文脈で性行為を介してのHPV感染の予防に『コンドーム』の適切な使用が言われることも多い。特にSNS上ではよく見るし、より攻撃的な・偏見といえる主張としては『生でしたから子宮頸がん・異形成になったんだろう』というものまである。

HPVに感染すること(HPV陽性になること)HPV関連疾患にかかることの負担の原因の一つに『偏見』がある、しかもHPV検査単独法が今後子宮頸がん検診で導入されていくことを考えると、HPVに感染しているとわかる・認知される(そして偏見の負担を負うことになる)のは圧倒的に検診を受ける女性ばかりだ。

偏見はできるだけ断っておく必要がある。

①『性行為感染症罹患した』ことと『性病に罹患した』ことは全く異なる。『性病』と表現した場合、性道徳に違反した感染症に罹患したと価値観が入った用語とし、医学的に正しい用語とはしない。性病は医学用語ではないし、性道徳の医学的実践において意味も利益もないので議論があるのであれば別でやってくれ🐰医学的実践においては道徳(価値観)の議論はしない。

価値観(偏見)に関する議論の混入が偏見の原因になっているから。

②また医学的実践において『コンドームの適切な使用におけるHPV感染症の予防』の効果は多くの人が考えているより限定的で実際上意味がないとされている。感染予防に非常に効果のあるワクチンが存在する現在、比較して『コンドームの適切な使用におけるHPV感染症の予防効果』は存在しないと言っても構わない。少なくともコンドームが有効な場面が存在するのであればワクチンを接種した方がいいわけで、ワクチンを接種したのであればコンドーム使用の有無はHPV感染に大きな影響を与えない。

偏見の原因として・また実際上意味がないこととして『コンドームによるHPV感染症の予防』に関して議論します。

***

まず”性行為を介してのHPV感染の予防に『コンドーム』の適切な使用”と言われることの原因の一つに医学・公衆衛生側の混乱・不統一がある🐰

英国NHSの記述を見てみると…いや、どっちなのよ🐰

https://www.nhs.uk/conditions/genital-warts/

https://www.nhs.uk/conditions/genital-warts/

・尖圭コンジローマの伝染をあらゆる性的接触において毎回使用すると伝染を止めることができる(※ただしHPVがコンドームで守られていない皮膚にいれば伝染する)

いや、どっちなのよ🐰

https://www.nhs.uk/conditions/human-papilloma-virus-hpv/

https://www.nhs.uk/conditions/human-papilloma-virus-hpv/

・コンドームの使用はあなたをHPV感染から守ることができます(※しかしコンドームは外陰・性器周辺をカバーしているわけではありません。したがって完全には守られていません)

いや、どっちなのよ🐰

感染源として男性に注目した場合、ハイリスクHPVは陰茎・陰嚢・外陰周辺・肛門・指・口腔・咽頭に感染・感染病変を作ることがわかっているわけだから、コンドームだけでは感染することもさせられることも予防できないこと・むしろ効果的に予防できると考える方が無理があるとわかるだろう。

HPVの感染が『感染部位』に注目した場合も極々ありふれている・特別子宮頸部と陰茎の問題ではないということね🐰

***

それでもコンドームの使用は(ワクチンが存在せず)HPV感染予防の効果的な方法がなかった状況においてHPV感染予防の文脈において推奨された歴史があります。

WHOもワクチン開発以前の2000年代前半の子宮頸がん予防戦略のなかでコンドームの使用は男性割礼(これもそのうち論じます)と共に予防法の一つとして挙げられていました。その残滓が今まで残っているというわけ

ワクチン導入当初の予防戦略・一時予防としてのコンドームと割礼はこの後消滅した。2018年のイニシアチブに含まれていない🐰

ワクチン導入当初の予防戦略・一時予防としてのコンドームと割礼はこの後消滅した。2018年のイニシアチブに含まれていない🐰

🐰ワクチンの開発成功で状況は一変したのですけどね。15歳未満の女性にとってHPV関連疾患の負担の圧倒的大部分は『ワクチン接種だけ』で予防できることがわかっている。

医療における実際の現場でのHPV感染予防とコンドーム

現在、HPVの感染予防法としてのコンドームの使用は、過去の残滓として『但し書き』が付いた上で残っているのが実際と言える。

HPVに関して、感染予防における有効性が大きく期待できないこと・偏見の原因の一つになっていること以外は、性交渉においてコンドームを使用することはそれ自体反対する理由はない。『避妊だけではなく多くの性行為感染症のリスク軽減として”コンドーム”の適切な使用は有効』であるのだから『セーフセックス』の観点からはHPVとは関係なく適切な使用が推奨される場面が多々あるだろう。

EUROGINE 2025 Portoでも『HPVに感染していることをパートナーに伝えるか』のセッションにおいて各国の婦人科の医師たちの間で活発な議論が行われていた。

ここでも『HPVワクチンを接種していない女性』においてコンドームの使用は推奨されるか?の議論であった。

実際の現場でコンドームの使用が進められている場面としていちばん大きなものが

・高度異形成治療後の再発予防として性交渉時のコンドームの使用

になる、これは実際広く臨床の現場で実践されているのだが議論は

(A)効果が実際あるのか(推奨すべきか)いつまで使用されるのが推奨されるか

ここには最初に述べた混乱が見られる。一般に対する説明と同様に『予防できるが・予防できない』という説明を受けた場合、患者側の不安に対して何の助けもならない。実際推奨していることも多いことから、現場での説明に矛盾を抱え混乱していることが見てとれる🐰

『再発を予防すべき再感染リスクが存在し』→『性交渉が再感染のリスクとなっている』→『そのリスクをコンドームが一部予防できるが・予防もできない』と説明をすれば当然の帰結として→『再感染のリスクを有効に低下させたいのであれば性交渉を持たないという選択がある』になる。

『コンドームが有効ですよ』と言うなら当然患者さんから『性交渉をしないと予防できますか』と質問がくるし、コンドームが有効ならその答えは当然『Yes』になる。同時に、再発予防を優先するのであれば『性交渉はなし』という結論になる(コンドームは感染を完全には予防できないことは嫌ほど強調されてきた)これはパートナーとの関係において重大な帰結を生む。お互いそれでいいのなら構わないが。

セッションのチェアであった、イスラエルのジェイコブ・ボーンスタインの答えは『新しいパートナーを持つのであれば推奨している』というものであった。はっきりと言わなかったが、かれは同じパートナーであればリスクはない、勧めていないとしている。

一方、スコットランドの婦人科医は治療後・回復しフォローアップ検査(細胞診主体)の結果が陰性化するまでコンドームの使用を推奨しているとのことだった。効果に関する厳密な議論に裏打ちされたものではなく、実践的な問題としてだ。

コンドームに予防効果があるとするのならワクチンを接種すればいいじゃない🐰

コンドームのHPV感染予防効果はエビデンスに裏打ちされたものではない。一方、HPVワクチンの感染予防効果はガチガチのエビデンスに裏打ちされたものだ。女性だけに接種して、キャリアである男性と性交渉をコンドームの有無関係なく自由にしてもらった結果、ワクチンを接種した女性において(対象とする型による)感染・異形成・がん・コンジローマがほぼ完璧に予防することができた。ワクチンを接種していれば、キャリアと接触しても感染しない・ほぼ完璧な感染予防ワクチンと言える。

EUROGINEにおける議論において(A)効果が実際あるのか(推奨すべきか)いつまで使用されるのが推奨されるか、に対してコンドームに予防効果がもしあるのであれば(再感染の不安があるのならと言い換えてもいい)簡単な答えは

『コンドームに予防効果がある(再感染リスクがある)とするのならワクチンを接種すればいい』

となる(と、🐰さんは学会でコメントした)

将来の感染リスクが存在する若い女性と同様に、再感染リスクのあるとするのなら当然ワクチンで予防できる。コンドームの効果を議論をするよりも圧倒的に確実で建設的であると言える。

実際は『HPVワクチンを接種していない・できない女性』においての議論(多くが現在ワクチンの対象でないこと)であることが注意されるべきだが、前回のレター『大人はHPVワクチンを接種すべきか』での議論と同様に本当に感染リスクがあるのであればコンドームの勧めるよりワクチン接種を推奨するべきだ。

これは治療後再発のワクチンでの予防として評価が進む分野でもある。

エビデンスから見た場合のコンドームのHPV感染予防効果

複数の観察研究が存在するが、その大部分でコンドームの使用とHPVの感染率(HPV検査の陽性率や異形成の罹患率)に関係はないことがわかっている。

代表的なものとしてはこれを挙げておく。PMID: 16492924

代表的なものとしてはこれを挙げておく。PMID: 16492924

この論文はワクチンが上市される直前のレポートして興味深い

読む場合に注意してほしい点がいくつかあるが、特に

HPV検査(タイピング)陽性率は感染率を反映するが感染率ではない。これは検査感度以下の感染があること、このHPV陽性が人生の一時点(中年以降)のクロスセクションであることを解釈時に忘れない。HPVは症状も・検査も陰性で持続感染することはここから十年以上かけて確立したことだ。その視点はない。

HPV陽性・陽性率と子宮頸がんや他の癌発症率は直接(そのまま1対1)の関係がない。DNA陽性率だけ見れば、20代が最大になるが、癌罹患のピークは40代以降だ。

・女性がHPV陽性になるリスクについて議論したもので、男性に関してではない。

それを除くと基本的なことはこの研究からわかる。

1:HPVが陽性になるリスクは女性の通算パートナー数。パートナー数と陽性率の間の関係に注目。数字を見ただけで、40代以降(HPVの陽性率が安定化したあと)のデータあることがわかるが、パートナーが1人の人に比較して2人の場合は2倍程度のリスクになっているが、3人以上はほとんど変化ないことがわかる。最も簡単に感染しているし当然男性パートナーも感染している。

2:この比較的女性が持つ通算パートナー数が少ない条件で(1〜3人、これ重要)大きなリスク要因は男性側の性的パートナー数の多さである。ここでは、婚姻外のパートナーをもっていたかどうかで調査してある。女性側が男性側が婚姻以外のパートナーを持っているかどうかを正確に知りようがないという問題があるが、結果は一目瞭然だ

婚姻外の性的関係が、性産業かどうかでは大きなリスクの違いになっていないことが注目すべきだ、HPV感染が極々ありふれていることを反映しており、男性側の感染リスクも簡単に飽和していることがわかる。パートナーを生涯で1人しか持たない女性にとって、主なリスクは男性側にあることになる。

(同時に性産業従事者の感染リスクはそうでない集団でパートナーを通算で4人持つ人と同程度だろうと推定できる。特別のリスクではなく、通常の推奨される間隔で検診を受ければ良い。今後は定期接種でワクチンを受けているのが前提だ)

3:コンドーム使用とHPVの陽性化リスク

ざっくりいうと差はない。これにはいくつか問題がある。

(A)もし、一回の性交渉あたりのHPVの伝染リスクを下げる効果がコンドームにあったとしても、生涯通算で行う性交渉の回数を考慮すると実際上の感染予防効果としてはどうか。99%の感染予防効果があっても100回性交渉をすれば60%以上の確率で感染することになる。

(B)また『コンドームを使用した』としてそれがどの程度完璧に実施されるかは現実的な問題になる。『生涯で行う全ての性交渉で適切に使用した』というのは現実的ではなく(半分の女性が生涯で一度は妊娠を希望して性交渉を行ったのであれば、大多数の女性はコンドームなしの性交渉を行うことになる)この調査でも『70%以上の性的接触においてコンドームを使用した』というのが調査上の区分にしている。

(C)コンドームを一度も使用したことがない場合と比較して、大体の場合で使用した(>70%)場合の方がHPV陽性リスクが高い傾向にあり『おそらくコンドームを使う傾向のあるパートナーはハイリスク男性(過去のパートナー数が多い)である傾向を反映しているかもしれない』と考察している。

いずれにせよ、コンドームが生涯を通じた性的活動において積極的にHPV感染を予防していることを支持するデータはない。他にもいくつか同様の調査があるが、全体としてのコンセンサスは同じようなものだ。

『コンドームに70%のHPV感染予防効果がある』と見たことがありますが🐰ここが出どころ

2006年の日経メディカルにも記事がある。『コンドーム使用で女性のHPV感染激減』と飛ばしに近いタイトルだが、これでコンドームの使用でHPV感染が効果的に予防できると考えたのであれば痛い目にあう。前項でも議論したがHPVに感染したくなければパートナーを持たないことに尽きる(今ならワクチンを接種することだ)。

これは非常に有名な論文で『コンドームにHPV感染予防効果がある』という場合のほぼ唯一の根拠となる論文で、NHSの記載の前半部分の根拠となる。

『コンドームの使用はあなたをHPV感染から守ることができます(※しかしコンドームは外陰・性器周辺をカバーしているわけではありません。したがって完全には守られていません)』

一方、実践的にはコンドームの完璧な使用によってもHPV感染は予防できていないと考えらていて、読み手を混乱させる但し書きがついて回ることになった。

この論文を受けて『コンドームの適切な利用でHPVの感染は効果的に予防できるよ』という方向にはなっていない。それが現実。

論文を解説する🐰論文自体は素晴らしいし重要な論文だ。PMID: 16790697

PMID: 16790697

PMID: 16790697

24000人の若い女性に研究への参加を呼びかけ、210人が研究に参加した。参加者は質問とウエブベースの性行動に関する日記(性交渉をした時にどのような男性と性交渉をしたか(同じ人物かパートナーの過去のパートナー数・コンドーム仕様の有無・割礼の有無を記録)を記録し、1年間の間に4回の診察及び必要に応じてHPV検査や細胞診などをおこなったというもの。

観察期間に(最初の診察日2週間前から1年間の間)性的にデビューした女性を対象にしたHPVの検出に関する研究になる。最終的に82人が評価の対象になった(24000人を招待してようやく82人が研究対象となった、210人中65人は一年の間に性的デビューしなかったし、60人は研究開始以前に性的にアクティブであった。あくまでも性的デビュー直後、通算のパートナー数が少ない場合を対象にした研究である)。

表面的な結論としては『コンドーム使用で女性のHPV感染激減』50%使えば半減・毎回使えば70%と記事の通りなのだが、これを鵜呑みにして、例えば20代の女性が今からパートナーを持つとしてコンドームを使えば70%感染を予防できると期待すると(70%の予防率で十分とは思えんが)痛い目を見る。そのような論文ではない(つまりタイトルはミスリードだ)。

サマリーにもあるが、新しく性的デビューをした女性の最初の1年間の研究だ。ざっくり人生で初めてから2人目のパートナーを持つまでの研究の結果である

性的経験がある人の中でHPVの感染率・陽性率の最大のリスクファクターは(何度も強調するが)通算のパートナー数が複数であることだ。単純に感染機会が倍増するからだ。

コンドームに50%の感染予防効果(パートナーあたりと仮にする)があったとしても、パートナー数が1人から2人になっただけで結果としては見えなくなるだろう。ざっくりいうと、コンドーム使用の有無の陽性率の違いはパートナー数が増えると簡単にかき消されてしまう。

サマリーにもあるように論文の著者たちは『新しく性的に活動的になった女性において(最初の1人目か2人目のパートナー)』と断っているのだが、日経のタイトルはひとめを引くが正しくない。

論文が明らかにしたのは主にその他のリスクである。

①コンドームを100%使用していた場合、HPVの陽性率は70%減少した。

これが『コンドームに70%のHPV感染予防効果がある』といった場合の具体的な根拠になる。とりあえず文字通りとしておく。

②新しいパートナーを持つことは大きな感染リスクになる。

新しく1人持つと5倍になりもう1人持つと7倍リスクが上がる。

③パートナーの過去のパートナー数がリスクになる。

この場合、0か1以上かでリスクが分かれた。ざっくりいうと童貞の男性はリスクが小さい。

納得できるだろうが自分にとって初めてのパートナーは相手にとっても初めてのパートナーである可能性が高い・傾向があるだろう。

また、男女ともに処女・童貞のパートナーは各自に平均1人ずつしか潜在的に用意されていない。自分が2人目のパートナーを持つ場合・相手も2人目以降であるのが平均的な傾向となるのが必然だ。ここで、自分がパートナーを(通算で)複数持つリスク・パートナーが(通算で)複数持つリスクを複合的に考慮に入れると『子宮頸がんの罹患リスクが(生涯で1人ではなく)複数のパートナーを持つこと』の意味が理解できるだろう。

もし、男女ともに生涯で持つパートナー数の平均が1に近くなり・またそれを目指すことで子宮頸がんの罹患率を半減(もっと減るかな)させたいのであれば、それはそれで可能だろうが。そうでないのなら、公衆衛生学的視点でパートナー数で子宮頸がんリスクをコントロールするのは有効な・現実的な方法ではないだろう。感染がありふれすぎている。

④男性が割礼をしているかどうかはHPVの陽性率に影響を与えなかった

さらっと流す。そのうち包茎・割礼と子宮頸がんリスクの関係としてまとめる。

『コンドームに70%のHPV感染予防効果がある』はどれくらい真に受けることができるのか

N数が少ないことを除いて。他の条件が完全に標準化されているとしても95%CIは40-90%のデータだ🐰残念ながら追試も存在しない。

まず現状としてコンドームの使用がHPV感染予防において有効な手段であるという啓発は行われていないことを強調される。70%の予防効果があると(正しかったとしても)強調する意味はあると考えられていない。

この結果に対する批判的な解釈として一番代表的かつ妥当なものが、

(A)パートナーのリスクが反映されやすい条件で

女性にとっては初めてから2人目のパートナーで、パートナー数によるリスクより・パートナーがキャリアであるかどうかのリスクが大きい条件で

男性パートナーも過去のパートナー数が少なく『キャリアであるかないか』がぶれやすい条件である(ある程度過去に性的にアクティブな男性であれば全員キャリアで女性にとっては飽和したリスクになるだろうがそうではないくらいの意味)

(B)パートナーのリスクが標準化されていない可能性があることだ

コンドーム使用群と不使用群の男性パートナーが同じ程度キャリアであったかどうかがN数が少ないこともあって標準化されていないのではないか?という批判だ。『たまたまコンドームを使うパートナーがもともとキャリアじゃなかったんじゃないの?』というもの。

これを解消するには、N数を増やすか・追試を行って同様の結果を示すしかない。

***

このようなこともあって、この論文の解釈後の位置付けとしては『限定された条件でコンドームに感染予防効果があるかもしれないことを示唆する論文』とされるが、公衆衛生学的観点からコンドームの使用がHPV感染予防に有効であることを支持する論文ではない。

他の疫学研究や、HPVの感染様式に関してわかっていること、生涯を通じての性交渉をもつたびに発生する感染機会に対しての現実的な有効性を考慮すると、実践的な意味で『コンドームにHPV感染予防効果がある』と積極的には言われなくなってしまった。

新しいパートナーを持つ場合・限定された性的接触回数おいて・ワクチンを接種するまでのつなぎとしての選択としてになる。そしてその場合でも

『コンドームに予防効果があるとするのならワクチンを接種すればいいじゃない🐰パートナーを持つ前に』

だし、NHSの説明としても以下のようになる。

コンドームの使用はあなたをHPV感染から守ることができます(※しかしコンドームは外陰・性器周辺をカバーしているわけではありません。したがって完全には守られていません)

まとめ

疫学的には『理論上・実践上のコンドームの限界』を反映してコンドームの使用に感染予防効果や子宮頸がん予防効果が見られないことがわかっている一方、限定的な条件で感染予防効果があるかもしれないことを示唆する論文が(エビデンスの強度としては高くないが一つだけ)存在する。それが、HPV感染予防におけるコンドームを使用することに関する記述や実際の現場での説明・実践のブレとなっている(高度異形成治療後の推奨などでは混乱している)。

コンドームの適切な利用にはHPV感染予防とは関係なく様々なメリットが存在し、使用が推奨されるべき様々な場面は多々あり適切な場面でのコンドームを勧めること自体に一般的な問題はない。同時に、理論上コンドームの効果はあったとしても限定的であるし・肛門や外陰全体・口腔に感染しうることを考えると効果があるとも考えにくい。

一方(実際に効果はないのに)『HPV感染予防効果がある』とすることは問題があることを説明した。偏見の原因になっていたり男性嫌悪の発露でしかない場合も多々存在する。コンドームによって予防できる感染や再発のリスクが本当に存在するのなら、その効果が不確実であることがわかっているコンドームを勧めるのではなく、ワクチン接種を勧めるべきだ。

その方が確実に意味がある🐰に尽きる。


無料で「アマクロ疣研」をメールでお届けします。コンテンツを見逃さず、読者限定記事も受け取れます。

すでに登録済みの方は こちら

読者限定
HPVの存在証明:(13)CPE・細胞変性効果について
誰でも
200年前の“ワクチン論争”:ヘンリー・ペティ卿への手紙(後編)
読者限定
『子宮頸がん予防の過去と現在と未来:HPVワクチンを接種すれば20代の...
読者限定
『子宮頸がん予防の過去と現在と未来:HPVワクチンを接種すれば20代の...
誰でも
HPVワクチンのリスクはどのくらいあるの・ないの?
読者限定
子宮頸がん検診でAGC(異型腺細胞)と診断されたとき
読者限定
中国国産HPVワクチンの位置付け🐰
読者限定
『HPVは根絶できるのか―天然痘のように』