イングランドの子宮頸がん検診プログラムに自宅での(自己採取サンプルによる)HPV検査が追加される。ゲームチェンジャーとなるか?

2018年のHPV検査単独法への移行以来の大きな変化だ。加えて50歳未満の検診間隔を5年に延長するなど、イングランドの検診プログラムが大きくアップデートされる。その意味について解説する。
アマミノクロウサギ 2025.07.08
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子宮頸がんは検診で予防することができる。特にワクチンの対象でない(現在の大部分の大人は対象でない)集団では『定期的に検診を受けていないこと』が子宮頸がんの一番大きなリスクファクターだ。

もちろん、進めたところで無料化したところで受診率が100%になることはないのだが、子宮頸がん検診の受診には様々なハードルがある(ここでは検診・スクリーニングのみを指す。精密検査は含まない)。

  • 病院や診療所に行かなくても自宅で検体を採取できるため、忙しい人や医療機関へのアクセスが限られている人でも検査を受けやすい。

  • 婦人科受診への不安や羞恥心、過去のトラウマなどで検診を避けていた人にとって、より安心でプライベートな方法だ。

  • 自分のタイミングで、自宅などで採取できるため、受診のストレスや不快感が軽減される。

そして一番大事なことは、『HPV検査』用として自己採取サンプルの精度は、医療従事者による採取と同等である(議論はあるが十分だろう)ことだろう。(自己採取サンプルの細胞診はアカン、そしてそれが問題)

自己採取サンプルによる子宮頸がん検診(HPV検査単独法)は夢のような検診法と言えそうだが、話はそう簡単でもない。端的には

イングランドの子宮頸がん検診において自己採取サンプルによるHPV検査法は全員に適応されるのではない

ことからもわかる。

通常の検診のタイミングにおいて『検診に招待しても検診を受けてくれない人のみ』を対象として、検査キットが自動的に送りつけられることになる。

『自己採取サンプルによる検診を希望する人』が自己採取法で検診を受けれるものでもない。希望して受けるとすれば、適切なタイミングの検診をワザと無視して対象になるのを待つ必要がある。そして、これは一般的には勧められない。なぜ、全員を対象としないのだろうか。

ちゃんと理由があるのよ🐰

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続きは、2154文字あります。
  • 検診を受けた・行っただけでは、子宮頸がんは予防できない・減らない🐰
  • つまり自己採取法によるHPV検査だけでは検診は完結しない
  • 検診(+トリアージ)として考えた場合、医療機関による採取が一番良い
  • では、自己採取サンプルHPV検査による検診の対象とすべき人は誰だろうか?
  • イングランドの子宮頸がん検診において、自己採取サンプルによるHPV検査法は検診を受診しない人を対象に導入される

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