HPVの存在証明(3)コッホの原則に従わない病原体たち
コッホは1890年の学会で自身の『結核菌と結核の因果関係の証明』とそれに続く感染性微生物による病気の発見をまとめて、コッホの原則(方法論)として定式化した。
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その病原体が疾患、病巣のすべての症例に存在しなければならないこと
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その病原体は他の疾患では存在せず、偶然見つかったものでも、病原性を示さないことはあってはならないこと(病原性に関する量的議論)
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純粋培養で体内から分離され、繰り返し継代され、かつその分離された病原体は、新たに疾患を誘発しなければならないこと
(現在一般にコッホの三(四)原則とされるものとは、項目が違うことに注意。第一原則が二つに分かれていて、第二・三原則が一つにまとまっている。第四原則はついでだ、今回はこれに従って話す)
この方法論としての原則は、その方法論としての強力さ・成功によって長い間『病原性と病原体の因果関係を立証する唯一の正当な根拠』として隷属的に支持されてきた様にみえる。
ウイルスなんて存在しないと主張する人たちも(その細かい実際上の主張において科学的な間違いがあることを除けば)、その主張の根拠はウイルスとウイルス感染症がコッホの原則を満たさないからウイルスという病原体(とその存在)と病気を認めることができないし・認めることはないというものだ。
一方、コッホの原則を確立したコッホ自身が、発表当時でさえ(コッホ自身によって)『コッホの原則を満たせないことが、ある病原体と病気の間に因果関係がある可能性を否定するものではない』と主張した。
病原体と病気の間の因果関係は…①コッホの原則を満たすと証明される、が②満たさないとしても可能性は否定されない。
コッホの原則とは”因果関係証明のための『ひとつの方法論』を述べたこと”をコッホ自身がよくわかっていた。
その当時(1890-1900年頃)
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炭疽菌と炭素症・結核菌と結核・溶連菌と丹毒・破傷風菌と破傷風(北里柴三郎の業績)
これらに関しては、コッホの原則を満たす形で『病原体と病気の間の因果関係』が証明され、病気の原因としての病原体がわかっていた。一方…
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腸チフスとチフス菌・ジフテリアとジフテリア菌・ハンセン病とらい菌・マラリアとマラリア原虫・コレラとコレラ菌
これらの病気と病原体に関しては、病気を持つ人のサンプルから病原体が発見されていたりしていた(病原体としては発見されていた)が、コッホの原則を満たす形で『病原体と病気の間の因果関係』が証明されていなかったし、現在でも証明されていないものもある(あくまでもコッホの原則を満たす形ではという意味)。
だからと言って、その病気が存在し、それらの病原体がその病気の原因になっていることに変わりがない。それぞれ、その根拠(と強度)が違うだけの話だ。
少し詳しく見ていこう🐰面白いから
・腸チフスとチフス菌
・ジフテリアとジフテリア菌
・ハンセン病とらい菌
・マラリアとマラリア原虫(と梅毒と梅毒トレポネーマ)
・コレラとコレラ菌
・科学的技術の発展:病気と病原体の因果関係の証明
・まとめ