子宮頸がんに罹患するリスクはなにできまる?
『1分間HPV』

子宮頸がんの発症リスクに影響を与える因子は何か?性交渉のパートナー数が多いと子宮頸がんになりやすいのか?性的経験によるリスクの違いを強調するのはミスリーディングね🐰
『1分間でHPVシリーズ』
アマミノクロウサギ(Amamino_Kurousagi) 2023.11.07
誰でも

このレターのリライト。

 ほとんど全ての子宮頸がんの原因がハイリスクHPVに感染することだ。ハイリスクHPVに感染する機会の大部分が、性交渉のような『密で繰り返される皮膚・粘膜の接触』になる。

『性交渉のパートナーが多いと、HPVの感染機会が増え子宮頸がんにかかるリスクが上がる』

 一見問題なく納得してしまうだろう。実際ある程度正しいのだが、正確に『多い』の部分が理解されているとは言い難い。

 HPVは持続感染するウイルスだ。『感染してもほとんどの場合排除される』←これが間違いで、一度感染すると生涯キャリアとなり続け、感染源になることもあれば、癌の原因となることもある。

 性的接触を持つと結構簡単に感染してしまっていて『1人とでも性的経験のある人の50%は生涯で一度は感染すると言われている』と聞いたことがあるだろう。これには続きがあって『通算で3人と性的接触がある人のほぼ全員が、最低一種類のハイリスクHPVに感染している』となる。

 実際のパートナー数と子宮頸がんの罹患リスクをまとめた図がこれだ。

1人目のパートナーを持つことが1番のリスク増加。その後パートナーが増えるとリスクがやや増加するが、全員が感染することになる3人目以降はリスクはあまり変わらない。複数のHPVが感染することによるリスクかやや増加する。

1人目のパートナーを持つことが1番のリスク増加。その後パートナーが増えるとリスクがやや増加するが、全員が感染することになる3人目以降はリスクはあまり変わらない。複数のHPVが感染することによるリスクかやや増加する。

 感染リスクを低く見積もっている・勘違いしていることが、自分の子宮頸がん発症リスクを低く見積もる原因になっているし『性経験が豊富だと子宮頸がんになりやすい』とか、ひどい場合は『不特定多数と性交渉をもつと…』など、偏見の原因となっている。

 リスクを過小評価することは健康上のリスクだし(定期的に検診に行こう!)、HPV感染症の負担の大きなものが、偏見・スティグマに関することだ。偏見を先に根絶する必要がある。

 その上で子宮頸がん発症リスクに影響を与える因子をまとめてみると…

極々普通の人生において自分でコントロールできることは大きくないのではないだろうか。検診には行こう🐰

子宮頸がんの罹患リスクに関して、性的経験の多寡を強調した説明は正確でなくむしろ危険だ。

  • 1人とでも性交渉をした(する)経験がある限り『特別リスクの低い集団』があるわけでない。

  • 性的経験の多寡で検診の重要性は変わらない。

  • 将来の性的経験の多寡でワクチン接種の重要性もかわらない(定期接種)。

  • HPV感染症は男女関係なくみんなの問題だ。自分だけリスクがないはあり得ない。感染しているし、感染させている。

  • なにより偏見自体が大きな負担となっている。

世界的なHPV感染症・子宮頸がん罹患リスクに関して、性的経験の多寡を強調した啓発・情報提供はしない。少なくとも、きちんと考えられたものならばね🐰

『1分間HPV』について

 クドくわかりにくいことには定評のある🐰さんが、トピック一点に絞って、1分間で読める程度の簡単な説明を試みる。簡便さ・理解のしやすさと正確性はトレードオフだ。実際は『複雑で簡単ではない事象』を簡便にまとめると、厳密に正確でない部分が出てくる。少なくとも条件付き主張の条件は落とさざるを得ない。その点は回数をこなすことで将来的に補完できれば幸いだ。

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