性交渉のパートナーが多いと、HPVの感染機会が増えるため、子宮頸がんにかかるリスクが上がるのか?

HPVの感染機会は性交渉だから当然そうだと言えそうだ。では、どの程度のパートナーを持てばどの程度多くなるのか?自分が考えていたこととあってる?
アマミノクロウサギ(Amamino_Kurousagi) 2023.11.02
誰でも

 まず一般的に言われていることとしてHPVワクチンの開発元であるMSDが提供する『子宮頸がん予防』のためのサイトを見てみよう。

性交渉をたくさん経験していると、子宮頸がんにかかりやすいって本当?

という質問に対して

性交渉のパートナーが多いと、HPVの感染機会が増えるため、子宮頸がんにかかるリスクが上がることが知られています。 ただ、経験人数が少なければHPVに感染しないというわけではなく、一度でも性交経験がある時点で誰にでもHPV感染の可能性があるということは理解しておきましょう。
https://www.shikyukeigan-yobo.jp/qa/

と答えている。

 『不特定多数の性的パートナーを持つと子宮頸がんになりやすい』が誤解や偏見だということは、比較的理解されるのは簡単だが、『不特定多数』を『性交渉のパートナーが多い』に変えただけで『まあ、それはそうかな』って納得してしまいません? 不特定多数って言葉が雑なだけで、性交渉のパートナーが多い、なら正しいの?より正しく理解したことになるの?

 MSDのサイトも出典としてはLancetの総説が挙げられていて、原著を見に行くとそう書いてありますもん🐰 ねー。

子宮頸がん発症のリスクファクターとは?

 Lancetの総説でまとめられている『子宮頸がんのリスクファクター』をあげてみる(🐰はこの内容にちょっと不満がある、そのうち説明する機会があれば)

まず大雑把なまとめとして

ほとんど全ての子宮頸がんは発がん性ハイリスクHPVの慢性感染(chronic infection)が原因になっている。したがって、子宮頸がんの発症リスクとは、HPVに感染する(感染する機会)か重篤な免疫不全状態、もしくはその両方だ

これは短いがとても考えられた文章だ、通り一編読んだだけなら、多くの人が誤解している。

 『Chronic infection(慢性感染(症))』が原因と『 Persistant infection (持続感染)』の用語を使ってないこと。これは重要なニュアンスの違いだと考える。症状を呈さない・がんに進行することのない感染者がほとんどで、その中から一部の人ががんを発症している。Persistant infectionなら誰でもしているのだが、問題となる様な・がんへと進行する様な病態を長期間持つ人(Chronic infection)が子宮頸がんのリスクがあるということだ。🐰なら少なくともこの二つは違う意味で扱う。

 誤解(1)感染している人・していない人がいる。感染・非感染、感染リスクの多寡が主に子宮頸がん発症リスクの多寡を決めている。 

違う🐰ほとんどの人が感染した上で、発症する人・しない人がいるのだ。

クロウサちゃん登場。

クロウサちゃん登場。

  また、HPV感染症が免疫でコントロールされるとは言え、子宮頸がんの発症リスクは『重篤な』免疫不全状態(HIV感染者や免疫抑制状態にある患者を想定している)としている点。全員が感染しているので、重篤な免疫不全は単独でリスクファクターだ。ごく普通の免疫状態を持つ人に、リスクの多寡(俗にいう免疫が強い・弱い)を言ったものはない。

誤解(2)異形成に罹患した人は免疫が弱かった(非科学的用法)。

ごく普通の免疫状態の人が普通に異形成になる。たんに確率の問題だ🐰

 HPVに感染する機会と重度の免疫不全、この二つが子宮頸がんのリスクだとまとめた上で、次に個別のリスクファクターを上げていく。

***
・低い初交年齢

 これは疫学的にもはっきりしている。HPVに感染する機会があるのだが、15歳で感染するのと、25歳で感染するのでは違いがあるのだろうか?同じ感染なら同じリスクなのか?おそらく違うと考えられている。

  子宮頸がんはその発症年齢が他のがんよりも若いことは知っているだろう。ざっくり40歳がその発症のピークとなっている。感染機会の多くは20代までにあり、それが原因で30代以降にがんが発症しているのだが、その発症にはピークが存在しダラダラと高齢になるほど発症するわけではない(死ぬまでず〜と感染し続けているのですよ)。

 これは、HPV感染からがんとして発症するまでの段階で何かしらがんの発症が誘導されすい時期が存在すると考えられている(そらくホルモンの影響があるだろうと考えられていることの理由)。簡単にいうと『生理がある期間の』女性はHPV感染からがんへの進行がやや起こりやすい環境にあるとされる。低い初交年齢は、より低年齢のHPV感染につながり、より低年齢でのHPVへの感染は、より長期間の『がんへとやや進行しやすい感染期間』を含むことになる。

誤解(3)15歳での感染・25歳での感染・35歳での感染・45歳での感染。同じ感染なら子宮頸がん発症リスクとしては同じ。

🐰いや違う。若い時の感染の方がよりリスクは高い。

次に

通算で複数の性的パートナーを持つこと・リスクの高い(過去にパートナーを持つ)パートナーを持つこと

キタキタ🐰これが『性交渉のパートナーが多いと、HPVの感染機会が増えるため、子宮頸がんにかかるリスクが上がることが知られています』の元ネタね。後で別に論じるけど、ここでは①複数(multiple)て2人以上だよね、と後半の②パートナーのリスクも同様に重要であることを指摘しておこう。なぜか重要なこの二つのニュアンスがMSDの説明の中ではすっぽり抜けてしまっている。はっきり言って意味を汲み取っていない。

MSDの説明としては

経験人数が少なければHPVに感染しないというわけではなく、一度でも性交経験がある時点で誰にでもHPV感染の可能性がある

と、注釈をいているけど、正しい理解には一歩足りないことを後で論じる。

次は…

免疫抑制

 前に論じた。HIV感染者や臓器移植者・自己免疫疾患で免疫抑制をかけているひとが念頭。ストレスや寝不足とかビタミン不足で免疫力が落ちてるとかいう話ではない(健康的な生活は一般論として大事だけど)

次に

他の性行為感染症の罹患歴

 これはよくわからない。二つの論点があって『性行為感染症の罹患歴がある人は感染機会が多い傾向がある』と『感染しているHPVに対して高度異形成以上の罹患リスク・慢性感染のリスクが高くなる』というもの。

 前者は大したことはない(後で述べる)。後者ははっきりとした疫学がない(クラミジア感染に弱い相関があることは知られているが、治療していれば問題ないだろう)。正直、これをリスクファクターとして入れた意味はよくわからない。

次に

外陰・膣のHPV関連病変の罹患歴

 これは、ざっくりHPV 16の感染で一番起こりやすいことが知られているから、HPV16に感染している可能性が上がる。HPV16の感染は特別のリスクとして捉えられる。

子宮頸がん検診が導入されている国では、検診を受診しないこと

 これは特に強調したい。検診が有効に行われている国では、子宮頸がんの多くが検診を受けていない集団から発症している。定期的に検診を受け続ければ中年以降の子宮頸がんの9割は予防できる。アメリカの受診率で8割程度、英国では7割弱の子宮頸がんが検診で予防されている。子宮頸がん罹患率に大きく影響を与える因子だ。

***

以上が個別のリスクファクターとして記載があるものだ。その上で

  • 喫煙が子宮がん・上皮内がんのリスクファクターであること。HPV感染者(ほぼ全員だが)禁煙をすることでリスクを半分にできることが記載されていること。

  • ピルの使用はリスクファクターとして取り上げられていないこと。

  • 妊娠・出産回数もリスク要因かもしれない。おそらくホルモンの変化などを介して。

を指摘しておこう。ピルについてはそのうちまとめていいかもね🐰

ざっくりまとめますと

 通常の免疫システムをもつ大部分の人にとって、HPVへの感染機会x期間(15〜45歳の間が重要)が子宮頸がんの罹患リスクの多寡になる。

簡単じゃろ?🐰

じゃあ、性交渉のパートナー数と感染機会の関係は?

 『性交渉のパートナーが多いと、HPVの感染機会が増えるため、子宮頸がんにかかるリスクが上がる』のは条件付きで正しい。だが、その条件を正しく把握しているか?

 HPVの感染が子宮頸がんの原因であるとわかる前から、性的活動性と子宮頸がん罹患率の関係はそれこそ活動的に検討されてきた。問題の一つは、感染機会から発症までに時間的ギャップがあることだ。20代までの感染機会の多寡を40代以降の罹患と結びつけて定量的に評価することの困難さを想像できるだろうか。

 前回のレターで、素朴な『性的な行動(それぞれ好きな様にどの様なものを取ってもらってもいい)の多寡で子宮頸がんへの罹りやすさが影響を受ける』というアイディアは、偏見に基づいたものであることを論じた。データの解釈・問題設定自体にに無意識の(それぞれの偏見の程度によって)バイアスがかかることを常に気をつける必要がある。

***

 まず、ランセットの総説では、リスクファクターとして一番大事なものが記述していない。する必要もないと考えたのだろう(それも妥当にも見える)。

・『最初の1人と性的接触をすること』

 徹底的に調べると、子宮頸がんの99.7%からHPVのDNAが検出される。子宮頸がんのほとんど全てがHPV感染が原因だろうとされる理由だ。HPVに感染しないと子宮頸がんには実質的にならない。その感染機会の大部分を占める性交渉をしたことがない人は子宮頸がんの発症リスクが非常に小さくなる。

 少なくとも『子宮頸がん検診を受けなくてもいい』とされるくらいには小さくなる

1人とでも性的な関係を持ったことがある人の50〜80%は、生涯で一度はHPVに感染することになる。

  聞いたことあるよね。これはざっくり正しく、アメリカでの調査で中年以降の女性の血液サンプルを用いて、抗ハイリスクHPV抗体のスクリーニングをしたら(ざっくり感染歴を示す)1人しかパートナーを持ったことがない場合でも50%の人から抗体が検出された。3人のパートナーを持っていたらざっくり全員から最低一種類のハイリスクHPVに対する抗体が検出された。それ以上のパートナー数をもつと、感染したことのある型の数の平均値が増えることになる(複数の型に感染していた)。

 女子大生における調査から、性的デビュー後2年間で70%の人がHPVに感染する(多くの性的パートナー数は1人で、半分がハイリスクHPVだった)という数値も参考になるだろう。

まとめると。

  • ざっくりパートナー1人から50%の確率でハイリスクHPVを感染させられる

  • 3人もパートナーがいれば、だいたい全ての人は最低一種類のハイリスクHPVに感染することになる

  • それ以上パートナーが増えると、複数のHPVに感染している可能性が増えていく

パートナー数と感染リスクの関係は理解した。次にパートナー数と子宮頸がん発症リスクの関係は?

 性交渉をしたことがない人とある人でどの程度子宮頸がんリスクが違うのかを正確な数値を出すのが難しいのだが(性的未経験の場合の頻度が小さすぎる)

・HPVの発がん性因子としての評価過程で、HPV検査陽性・陰性(感染・非感染ではないのに注意)の比較で子宮頸がん発症リスクが50倍以上違う

・子宮頸がんの99.7%からHPVのDNAが検出されることから、非HPV関連子宮頸がんはHPV関連子宮頸がんの0.3%未満(比較して300倍以上の罹患率の差があることになる)

この数値から、仮に性交渉を通じてハイリスクHPVに感染すると、性交渉前と比較して200倍以上子宮頸がんリスクが上がることになると解釈しよう (本物の疫学者に焼き討ちされそう。いい数字があれば教えてほしい)。

その上で、1人目のパートナーをもつと子宮頸がん罹患リスクがどの程度上がるのか見てみよう。

  • 1人目の性的パートナーからハイリスクHPVをもらう可能性は50%くらい

  • ハイリスクHPVに感染すると、未感染の時とくらべて200倍子宮頸がんになりやすくなる

  • 初交前のハイリスクHPVの子宮頸部への感染率は0とする

0.5 (半分の人が感染する)x 200 (罹患率が200倍になる)=100倍

この様な数値になっても極端に外れていないだろう。異論があったら注釈してもらえるか、好きな数字を使ってもらえばいい🐰

(HPVに感染しないと子宮頸がんにはならないということは、200倍という数値は仮にざっくりとした程度を捉えるための数値ということ。厳密に正確ではないしそれで構わない)

1人目のパートナーを持つことは、処女である時と比較して大雑把に100倍子宮頸がんになりやすくなるということだ🐰まずここが分かれ目ね。

***

次に『複数のパートナーを持つこと』がリスクだとして、パートナー数と子宮頸がん発症リスクを定量的に調べたらどうなるだろうか。

  前のレター『不特定多数と性交渉をすると子宮頸がんになるの?②』でも指摘した様に、複数のパートナーを持つことと子宮頸がん罹患率を関連づけることに関して、その区分はかなり恣意的になる。『1人・それ以上』、『1人・2人・それ以上』、『1〜2人・それ以上』、『1人・2〜3人・それ以上』だったりする。Skrabaneが『Promiscuity(性的パートナーが多い)とはその研究をしたもの自身のパートナー数より多い場合を指すのだろう』と皮肉っぽく指摘したのを思い出してほしい。

  いずれの場合でも、パートナー数と子宮頸がんの罹患リスクは直線的な比例関係にあるのではなく、結構すぐに頭打ちになっている(例えば PMID: 25987056とか)。ざっくりまとめると…

  • パートナーが1人の時のリスクを1とすると、5人目くらいまではリスクがパートナー数が増えるに従って増加する。

  • 論文・調査によって違うが5〜7人目以上のパートナーを持つことにたいしては、子宮頸がん発症リスクとしてはあまり変わらない。

と、この様になる。

図にまとめて注釈を入れてみよう。。

ざっくりとした解釈。実際はいろいろな条件のひとが重層的に混ざることになる。

ざっくりとした解釈。実際はいろいろな条件のひとが重層的に混ざることになる。

感染リスク・発症リスク共に、パートナー数に対して直線的な比例関係になる範囲は小さく、すぐ頭打ちになることがポイント。複数の型が感染することによるリスクも直線的な関係にならないことがポイントだ。

  • 1人目の性的パートナーを持つことが1番のリスク増加になる。子宮頸がん罹患率に対して100倍とかいう数値になる

  • それ以降はパートナー数の増加は、感染率+型の数の増加に応じてリスクが増加する。感染率としては3人目くらいで100%に近くなる。集団全体をみて1人しか持たない場合と比較して2倍程度の子宮頸がん罹患リスクの増加となるだろう(感染している人が増える(2倍になる)からで、1人目で感染していた個人単独をみると2倍のリスクになってない)。

  • 複数の型が感染することによるリスク増加も5〜7人目で飽和する。3人持つことと比較してさらに2倍となることはない様だ。

誤解(4)性交渉のパートナーが多いとHPVの感染機会が増えるため子宮頸がんにかかるリスクが上がるといった場合、パートナー数と発症リスクの関係が直線的に増加する

誤解(5)性交渉のパートナーが多いとHPVの感染機会が増えるため子宮頸がんにかかるリスクが上がるといった場合、人数に応じて増加する範囲は2人目から数人目ではなく10人目とか(それぞれ好きな数字をどうぞ)もっと多いと考えていた。

ならん🐰

 パートナーが多いと発症リスクが上がるっていった場合。0から1に多くなるところ(初めてロマンチックな関係を持つところ)が一番重要な分かれ目になる(性交渉をすることは当たり前でそのリスク増加も当たり前すぎて、ランセットの総説で記述されないほどに)。

その他の重要な感染・発症リスク因子

 これまでの考察は全て子宮頸がんを罹患する側(女性)を中心に見てきたが、感染リスクを見る場合にはキャリアである(感染源となりうる)男性側の考察も必要だ。端的には過去のパートナー数の多寡が問題となる。

 特に女性側のパートナーが少ないうち(1-3人くらい?)の主な・少なくとも半分以上のリスクは、主にリスクの高い男性パートナーであるかどうかだ。

 この場合も結構簡単にリスクが飽和すると考えて良い。5人と10人とたくさん(人によって定義が変わるだろう)のパートナーを持っていた人が特にリスクの高い男性であるのではなく、性的デビュー前(童貞ね)の一番リスクが低い男性がいて、1人過去に持ったことがあるとリスクが大きく上がり、その後パートナー数の増加に合わせて徐々にリスクが上がるが、数人目以降であればほぼ全員最低一種類のハイリスクHPVに感染していると考えていいだろう。6人目以上でリスクの大きな増加あるとも考えにくい(女性と一緒)。

 感染・キャリアであるリスクに関しては、男性女性まったく同じ様に考えていい。

まとめ

 これまで見てきて『子宮頸がんのリスクファクター』・『特に性的パートナー数と罹患リスク増加』についてどのくらい正しく理解していただろうか。特に程度に関して誤解していなかかったか?

誤解(1)感染している人・していない人がいる。感染・非感染、感染リスクの多寡が主に子宮頸がん発症リスクの多寡を決めている。

誤解(2)異形成に罹患した人は免疫が弱かった(非科学的用法)。

誤解(3)15歳での感染・25歳での感染・35歳での感染・45歳での感染。同じ感染なら子宮頸がん発症リスクとしては同じ。

誤解(4)性交渉のパートナーが多いとHPVの感染機会が増えるため子宮頸がんにかかるリスクが上がるといった場合、パートナー数と発症リスクの関係が直線的に増加する

誤解(5)性交渉のパートナーが多いとHPVの感染機会が増えるため子宮頸がんにかかるリスクが上がるといった場合、人数に応じて増加する範囲は2人目から数人目ではなく10人目とか(それぞれ好きな数字をどうぞ)もっと多いと考えていた。

ここに配置されたボタンは、ニュースレター上でのみ押すことができます。

性交渉のパートナーが多いと、HPVの感染機会が増えるため、子宮頸がんにかかるリスクが上がることが知られています。

  正しいことは正しい。でも、不特定多数といった場合と比較してどの程度正確であっただろうか(🐰は同じ程度に雑だと考える)。パートナー数とHPV感染・子宮頸がん罹患に関係があると情報提供をする場合、公衆衛生的な意味としては、そのことが子宮頸がん予防に関して具体的にどの様な対策・行動の変化につながるかが重要な論点になる。

・もちろんリスクを最小化するために生涯パートナーを持たないことを推奨するのではないことは明らかだろう。個人的に持たない選択をするのは問題ない。だが、公衆衛生上の考え方として性交渉を最低1人と持つことがあるのは前提と言っていい(ランセットのリスクファクターの項目で無視されるほどに)。

・男性も女性も厳格な一夫一妻主義であることを推奨するのだろうか。これも、個人的にその様な生き方をするのは問題ない。あくまで公衆衛生上の問題として目指すものではないだろう。

・性的活動性の多寡で検診の頻度や重要性が変わるか?変える合理的な理由はない。一夫一妻主義であろうと関係ない。

・生涯で様々な理由で2人目3人目のパートナーを持つ場合、子宮頸がん(HPV関連癌)発症リスクを考えて抑制することを公衆衛生上の選択として目指すのだろうか。もちろん、個人的な選択としては構わない。

・性的活動性の多寡で考えた場合、特にリスクが高いグループがあるわけではない。性産業従事者を含めても同様。ごく平均的な(一生で数人の性的パートナーを持つ男女がいるくらいの意味)人生を送った場合とそれ以上の性的活動性を持った場合において、大きなリスクの差があるわけではない。この誤解は危険である。

・ワクチンの必要性に関しても同様だ。将来の性的活動性の多寡はワクチンの重要性に大きな影響を与えない。公衆衛生上の意味では。

・厳格な一夫一妻主義でも(性交渉以外のキャリアであるリスクがあって、夫婦間の性交渉を通じて子宮頸部に感染してしまうことがある以上)検診は重要だし、検診を受ければ検査陽性になったり、感染病変が見つかったりすることもあるだろう。その場合も厳格な一夫一妻主義に反したとは限らない。例外は例外としてきちんと理解する必要がある。

 これらを考慮に入れた場合、子宮頸がん発症リスクとパートナー数の関係を(不用意に)強調することは意味はどの程度あるのだろうか。

 多くの人が真の意味を正しく理解しているのか?

 その情報によって何かしら意味のある選択・行動の変化に繋がっているのだろうか?繋がっているとすれば何か?

 誤解と偏見の原因になっていることはないか?

 どう考えますか?意見があれば教えていただけると、勉強になります🐰

  HPV関連がんの世界的な啓発においては、重要なメッセージとして『性交渉をする限り等しく感染リスクがあり、そこから一部の人でがん発症リスクがある』とだけ言及する様になっている。性的活動性の多寡が条件付きでがん発症リスクと関連があることに関して、特に強調されません。公衆衛生上の意味が大きくないからで、性的活動性と感染リスクの多寡を強調しすぎることが、かえって誤解と偏見を招くことがあるからです。

補足

 HPV感染リスクにおいてはパートナーが同性だろうと異性だろうと関係ないです。議論を簡潔にするためにヘテロな関係を代表に論じました。

 子宮頸がん以外のHPV関連がんに関しても全く同じ議論ができます。聞いたことがありません?オーラルセックスのパートナー数がXXだと中咽頭がんのリスクがXX 倍になるとか。疫学的な観察としてはかまいません。でも、公衆衛生的な考えかたを、ここで子宮頸がんに関して行ったように当てはめてみた場合、どのくらい意味があるでしょうか?

 ゴシップ以上の意味ありますかね🐰

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