尋常性疣贅ってなに?

今回は軽いお題。書いてて簡単じゃないけど楽しい。
アマミノクロウサギ 2026.11.03
誰でも

きっかけはこれ🐰 これなーんだ?

足の裏にできたらしい

足の裏にできたらしい

🥭『尋常性疣贅じゃないか?』

🐶『典型的じゃないように見える』

🐰『美しい❤️』

***

HPVの病原性は①型②感染部位③ホスト因子(④環境要因)で決まる。長くなるので、今日はこれ以上突っ込まない。

***

尋常性疣贅とはHPVの感染が原因で皮膚にできるイボのことで病因の観点から見た場合

『尋常性疣贅=ウイルス性疣贅』

となる🐰

尋常性疣贅とは

難しい言い方をしているが『尋常性→普通の』という意味なので、文字通り『ただのイボ』という意味。でも、何で普通の?というかというと、当然『普通じゃない』イボがあったからだ🐰

初出はおそらく『Plenck JJ. Doctrina de morbis cutaneis, qua hi morbi in suas classes, genera et species rediguntur. Viennae: apud Rudolphum Graeffer; 1776. pp. 96–97.』(こちらから、孫引きしていった。スキャンはこちら)になる

ここでは、Plenck は皮膚の病気を『病因ではなく、病態:主に目に見える形態にもとづいて分類』していった。

その中で疣贅(Verruca・いぼ)を

硬く、ざらつき、痛みがなく、皮膚から突出する結節である。主に顔や手に生じ、ほかの部位にできることは少ない。原因はほとんど分かっておらず。疣贅を生じさせる刺激性の性質があるのか、また疣贅が伝染するのかも、はっきりとは分かっていない。

疣贅の感染実験がなされるのは100年後だ

と定義し、その分類を…

・Verruca vulgaris 「尋常性疣贅」:基部と頂部の幅が同じ

・ Verruca pensilis / acrochordon :柄で皮膚につくもの。現代のアクロコルドン・首イボ・軟性線維腫に相当するか

・Verruca sessilis / porrum: 皮膚に埋まり、ほとんど突出しないもの。何に該当するかわからないが、足底疣贅などは当てはまりそう

・Verruca carnea / mollusca :柔らかく、皮膚色〜赤色で、毛が生えることもある顔・鼻の腫瘤。名前から連想する、伝染性軟属腫(水いぼ)とは同じではなさそう。「軟らかい肉様の腫瘤」という記載。

・Verruca madida / myrmecium :柔らかく、裸出し、常に湿っているもの。これも名前から想像する、ミルメシア(深在性足底疣贅)と同じではなさそう

・Verruca gregalis :顔や手に群れて生じ、自然に消える小疣贅。扁平疣贅ぽい

・ Verruca febrilis :発熱とともに全身に発疹状に現れるもの。「疣贅状痘瘡」を参照させている。

・ Verruca cancrosa / maligna :痛みがあり、青黒色または赤色で、癌になると考えられた疣贅。

・ Verrucae venereae :性病(歴史的記載・ママ)患者に現れる、桑の実状またはフランベジア様の疣贅。現代の尖圭コンジローマと考えれる記載だが、コンジローマは別の項目で『男女とも、肛門や外性器の周囲に生じる柔らかい疣贅』と記載があり、同じものかどうかが厳密にはわからない。現在ではともにHPV6/11型の感染で起こる性器イボ(Genital wartの直訳)を、形態によって二つに分類していたと解釈する方が正しそう。

***

この分類の中で、現代まで生き残ったのは『Verruca vulgaris (英語でcommon wart)』(とacrochordon )だけであった🐰

そのため、名前にには残った『尋常性・vulgaris・common』が、何に対して『普通の』を意味したのか、の意味は失われてしまったと言える。

ウイルス性疣贅は病因がわかってからつけられた名前・概念

『Payne JF. On the contagiousness of common warts. Br J Dermatol. 1891;3:185–188.』において、少年のイボを診察した後、自分の親指の爪の下にもイボができた経験が報告され、尋常性疣贅の感染性が示唆された。

これを皮切りに、コッホ・ヘンレの原則を満たそうと、イボの材料を用いた接種実験が重ねられ、1907年にはCiuffoが、細菌を通さない濾液によってイボを伝搬できることを示した。

さらに、イボの組織においてウイルス粒子が電子顕微鏡で観察されるにいたり『イボの原因となるウイルスがPapillomavirusとして発見・分類』されていくことにつながっていく。

こうして尋常性疣贅とパピローマウイルス感染との病因論が確立し、尋常性疣贅はウイルス性疣贅として位置づけられたってわけ🐰

(閑話休題:治療ガイドラインではウイルス性疣贅の中に、水イボ(違うウイルスによる病態)も分類されているが、この流れをみればわかるように、形態・病態からして、尋常性疣贅と水イボは全く異なる(皮膚科医は混同することはない)し、病理組織学的にも全く性質が異なる・電子顕微鏡で観察できるウイルスの形態も全く異なる等、異なるウイルスが原因になっていることはわかりやすい。病因論からみると『ウイルス感染が原因で生じる皮膚の突起』だが『ウイルス性疣贅』と『水イボ・伝染性軟属腫』は一度も交わったことがない。ウイルス性疣贅と伝染性軟属腫は別の独立した枠とした方が良い)

さて、ウイルス性疣贅(もしくは尋常性疣贅)を分類していこう

①まず、尋常性疣贅の『尋常性』の医学史上の意味は無くなってしまい、一番広い意味としては『(HPV感染が原因の)ウイルス性疣贅』と同じ意味で使用される

②一方で、(HPV感染が原因の)ウイルス性疣贅もその発症部位・形態等の違い・病態の違いから細かく分類できる。その時『尋常性疣贅』の意味が狭くなり対比される形で『XYZ疣贅』のような使われ方をする。

②で細かい分類を使う意味は臨床上あることもあればないこともある。異なるHPVが原因になっていることがあり、医学的(ウイルス学的)には意味があっても、患者・医療上は『なにが違いますの?治療法も同じ?ならウイルス性疣贅でいいではないですか?』ということもできる。

分類はガイドラインから取ってみた。わかるように臨床的特徴で分類されている。この分類表は、いろいろ議論が残っていると言える。

(尋常性疣贅の非典型例とは言葉の意味から矛盾があって面白い。過去にあった尋常性の意味がなくなってしまったからね)

(HPV2aとHPV1a の”a”はそれぞれ取り除いた方が正しい。次回改訂時よろしくな🐰)

最初に戻ろう。これは何だ?

①まず、毛のない・指紋のある足底にできた『ウイルス性疣贅』だ。”HPV感染が原因の”と付ければ説明的で良いだろう

②小さなツノが生えているが、それぞれが一つの増殖ユニット(付属器・組織幹細胞・ここでは汗腺単位)に感染したHPVがそれぞれ外方性に増殖したものになる。つまり、小さなイボが集簇して一つの大きなイボと作っている。

コンジローマでもみられることがあるよね🐰これも同様に(おそらく)脂腺や毛包間上皮の幹細胞に感染した小さなイボが外方性に増殖し集簇したものだ。

メディカルノートから引用。

メディカルノートから引用。

③一方で、典型的な(?)尋常性疣贅とは臨床的特徴が異なる(といってもバリエーションがいろいろあるからな)

『トゲトゲしい尋常性疣贅はむしろまれ。 多くの尋常性疣贅はもっと丸っこいことが多い』

そうとも言える。

もしPlenckが現代にいたのなら、この病態はVerruca vulgarisではなくVerrucae venereae に分類したかもしれない🐰(どの程度の形態・臨床的特徴を示すかによるという意味)

もしこれをみたら)HPVの病原性は①型②感染部位③ホスト因子(④環境要因)で決まるを援用して)

A:HPV感染が原因の『ウイルス性疣贅』だ(広くは尋常性疣贅の仲間だ)

B:疣贅ができた位置から言うと『足底疣贅』だ

C:臨床的特徴は典型的ではない(B・Cを強く意識した診断になれば’尋常性疣贅’としないかも)

D:④を考慮すると、圧力がかからないところ・もしくは歩かないなどそれに準ずる要因があるのではないか、と解釈してもいいかも

***

ネットをサーフしていたらいい例があって『https://hibikinohifuka.com/worries/verruca_vulgaris/』の一例目。

冒頭の写真に近く『糸状』になることもあると記載がある。そして、部位を見てもらうと『関節の裏側にあって、測定では圧のかかりにくい部分』にあるでしょ。

『尋常性疣贅・ウイルス性のいぼ・バリエーションがいろいろあります』と記載も過不足ない🐰

***

こんなところでどうだろうか🐰

ウイルス性疣贅とざっくりまとめることもできれば、特徴・違う点にこだわってXX疣贅と”あえて”いうこもできる。臨床像・経過に違いがあれば、診断や治療に関係したり・しなかったりすることもあれば、その違いをきっかけに新しいHPVが見つかってきたという医学史上のお話もあるというわけ。

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