HPVワクチンを接種するとパートナーを感染からまもれるの?まもれないの?

ざっくりキャリアになる前にワクチンを接種したのであれば守れるのだけど…あれ?誰からもらってキャリアになるんだっけ?
アマミノクロウサギ(Amamino_Kurousagi) 2024.02.21
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サムネは(https://gendai.media/articles/images/76746)から。元は公式インスタとのこと🐰

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男女ともにHPVに感染する最大の機会は性交渉🐰これは常識になっているとしてもいいよね。

純粋な感染予防ワクチンであるHPVワクチンを接種するとワクチン接種以降(ワクチンが標的とする)『新しい』HPVに感染しなくなる。『新しい』としたのは、『過去に』感染して『今』感染が続いているHPVに対しては効果がないからだ。

HPVは『感染しては治癒する』を繰り返すような、短期的な感染を繰り返すウイルスではない。『一度感染すると感染が完全に排除されることはなく持続的感染する』ウイルスだ。ヘルペスウイルスと同じ様な性質をもつ。

感染すると『免疫システムによる制御の度合いに応じて』、全く押さえ込まれてHPV検査でも陽性とならない様な感染からー目で見てもわかる様なイボとか異形成やコンジローマとして)活動性病変を形成するものまでを行ったり来たりする。感染性ウイルスの産生量もそれぞれとなるだろう。

一度感染が成立したHPV (とその感染病変)に対して、HPVワクチンは効果がない。その背景はこちらに説明した(HPVとはどの様なウイルスか(2):扁平重層上皮と棲家として選んだ、その結果…)。

HPVワクチンを接種すると接種した人が感染から守られるのはいいだろう。それでは、パートナーは接種から守られるのだろうか?二通りの可能性がある🐰

HPVワクチンを(感染前に)接種することによって自分がHPVキャリアにならないと将来のパートナーに感染させることもない

これはわかりやすいし、確実であることもわかるだろう。

スコットランドなど、女性だけに接種した国でも初交前に90%近くが接種した集団では①未接種の女性において感染率・高度異形成の罹患率が減少したし②男性のコンジローマも減少した。

ワクチンがない時代、パートナー間で感染が蔓延していたのが、パートナーの半分がワクチンを接種して感染を媒介しなくなった結果、集団全体でHPVの感染率が減少したのをみるとわかりやすいだろう。これは接種率が高い場合に観察される集団免疫効果として解釈できる。

感染経路が濃密で繰り返される皮膚・粘膜の接触であるHPVは特に集団免疫効果が発揮されやすい感染症・ワクチンの組み合わせということができる。

もう一つの可能性が…

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続きは、2301文字あります。
  • 感染している人がHPVワクチンを接種すると感染性を失わせることができる結果、パートナーに感染させない(のか?)
  • ワクチンを接種しない状態での性交渉がどれほど感染機会に富んでいるかわかるでしょう。
  • ちょっと野暮だけど、韓国ドラマにおける男性へのHPVワクチン啓発は科学的には正確ではない
  • 『男性が接種するとパートナーを守れる』とは
  • 男女関係ないことがわかるよね
  • 問題は男性の公費補助対象(定期接種)は高校一年生まで

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