HPVワクチンの作用機序について

ワクチンによって血中に誘導される中和抗体がどのようにして粘膜・皮膚感染を予防できるのか🐰
アマミノクロウサギ(Amamino_Kurousagi) 2024.09.30
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ワクチン開発の始める前の課題

HPVワクチンの開発においての最初の課題は、パピローマウイルス感染の予防およびパピローマの自然治癒(獲得免疫の成立によって達成されると考えられていた)において液性免疫と細胞性免疫の役割を解明すること。

言い換えると、獲得免疫を誘導する(ワクチンを開発)ための免疫原として適切なウイルス蛋白質は何かという問い🐰

特に、ウイルス粒子表面抗原を標的とした中和抗体がパピローマウイルス感染を防ぐことができれば、精製された構造蛋白質を使用したワクチンが感染予防ワクチンとして、最も簡単に開発できることが期待された。

これはHPVの病原性を考慮すると非常に重要なポイントになる。

HPVに発がんを誘導するウイルス遺伝子が存在する。不活化ワクチンや弱毒化生ワクチンをワクチンとして利用することは、ウイルスがん遺伝子もワクチンの成分として含まれることになる。これはちょっとアブナイね🐰

発癌に関係ないサブユニット(コンポーネント)ワクチンが安全性の点から好ましいと考えられた。体液性免疫(中和抗体)誘導による感染予防ワクチンが実現すれば、パピローマウイルスの感染を防ぎ、最終的にはパピローマウイルス関連疾患を根絶する可能性があると言えた。

『中和抗体を誘導するワクチンで感染予防を目指したい🐰』

***
一方で、液性免疫(中和抗体)による感染予防は、すでにHPVに感染していてHPV関連のがんになるリスクがある多くの人にとっては役に立たない。基本的に細胞の外にあるウイルスを標的とするのであって、感染している細胞の中にいるウイルス(感染細胞)を標的とはしないから(抗体依存性細胞障害はおいておいて)。

HPV感染が治るのは、細胞性免疫反応によるものだと考えられているけど、その標的となるウイルスの蛋白質はまだ特定されていない(少なくとも表面の蛋白質ではない、有効性が臨床試験で最終的に示されていない)。

前がん状態やHPV関連がんの細胞を狙う細胞性免疫を誘導するワクチン(開発中)が、感染後の発症予防や治療に効果があるかどうか、さらに潜伏しているHPVの再活性化を防げるかどうかは、今後の研究課題と言えるよ🐰

①液性免疫を誘導するワクチンは、実際にウイルス様粒子ワクチンとして開発され、感染予防に成功した。②一方、治療用のワクチンとして細胞性免疫を誘導するワクチンの開発はまだ進行中ということね🐰

さてここまでが前置き、ここからワクチン開発がされるまでのプロセスはこちら

今回は、現行の感染予防HPVワクチンがどのような機序で効果を発揮するのかを説明するね🐰

***

HPVワクチンの開発以前に効果が確認され実用化された『感染→発症予防ワクチン』は、全身性疾患を引き起こす感染性病原体に対するものであったこと。

ワクチンによって誘導された血液中に存在する中和抗体(IgG)は一般に循環を通過した後に病気を引き起こすウイルス・ざっくりウイルス血症を起こす・ウイルスに対して有効だと考えられていたから。皮膚・粘膜上皮だけ・表面だけに局所感染・局所感染病変形成をするウイルスに効きますのかいの?という根本的な問い、実際の懸念ね🐰

血中の中和抗体を誘導しても、表面の局所感染をするウイルスに効くんかいな?

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続きは、2712文字あります。
  • HPVワクチンが有効であるのは主にウイルス側に事情があった
  • パピローマウイルス(PV)は、重層扁平上皮に完全に特化した珍しいライフサイクルを持っている。
  • 🐰『中和抗体が存在したらよわよわなウイルスでした』
  • 血中(組織間液中)に存在する中和抗体に感染抑制される仕組み
  • 感染に必要な上皮に傷ができると、血中(組織間液中)の中和抗体が直接滲み出ていた
  • 中和抗体が存在する環境に達してから、感染が成立するまでに時間がかかっていた
  • 実際に中和抗体を免疫のない動物に移植したらどうなった?
  • まとめ

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