積極的推奨が中止された本当の原因・理由は?
HPVワクチンの積極的勧奨中断は、2013年6月14日に開催された合同審議会で決定された
🐰こちらから議事録が読める。
この会議では、HPVワクチン接種後に報告されている症状とその評価について議論が行われ、その結果として「積極的勧奨を差し控える」という行政判断が示された。
ざっくりロジックを追うと
(1)接種後症状の報告があること
持続する疼痛
運動障害
倦怠感
自律神経症状
これらはワクチン接種後の慢性的で多様な症状群として提示されていた。
(2)症例の提示ルート(こちらの資料で全例確認できる)
医療機関からの副反応疑い報告
製造販売業者による安全性報告
患者団体から提示された症例(24例)
この結果、審議の場では複数の情報源から同様の症状が提示されることが確認された。
これは安全性評価の観点では「シグナルが存在する可能性」としては評価の必要があるのは特に異論はないだろう🐰
(3)因果関係評価の困難
一方で『ワクチン接種後の慢性的で多様な症状群』は
症状の診断基準が明確でない
発症機序が不明
発症時期にばらつきがある
客観的検査所見が乏しい
そのため、従来のワクチン副反応評価の枠組みでは因果関係の評価が困難であるという認識が共有された。
(4)審議会での結論
この状況を踏まえ、審議会では
安全性に重大な懸念が確認されたわけではないが
しかしワクチンの安全性に対して国民の不安・懸念が存在し
それを説明する必要がある
という点が強調された。
その結果『国民への適切な情報提供が可能になるまで積極的勧奨を差し控える』という対応が示された。
まとめると、審議会の判断ロジックはこうなる。
『ワクチンの安全性に対する無視できない懸念に対して、根拠をもって説明することができなかったから、積極的勧奨が中断された』
🐰『根拠を示して説明できなかったのが直接の理由な』
なぜ説明する必要が生じたのか(政策環境)
問題は「評価が困難な症例群」なんだけど、症例としては以前から把握されていたのにも関わらず、2013年の4月以降6月までに、これに対して行政が説明責任を負う状況が急速に形成された。
この政策環境を理解するのに特に重要なのは次の時系列になった🐰
①2013年3月
杉並区の中学生の重篤なワクチン接種後症例が報道される
②2013年3月25日
「子宮頸がんワクチン被害者連絡会」が設立される(当然、それ以前から接種後症状を訴える患者は存在していたから設立された)
③2013年4月1日
HPVワクチンが予防接種法に基づく定期接種として導入される(国・自治体が接種を勧奨する主体となり、ワクチンの安全性について行政側が説明責任を負う状況になったという意味🐰国民の関心・説明要求も高まる)
④2013年4月9日
接種後症状を訴える患者の問題(子宮頸がんワクチン被害者連絡会)が朝日新聞社会面トップ記事として報道される
⑤さらに、この問題は国会でも取り上げられた🐰
2013年1月以降、6月14日の審議会で積極的勧奨中断が決定されるまでの間に、
阿部知子
上野通子
川田龍平
田村智子
はたともこ
らの国会議員がHPVワクチン接種後症状に関する質問を行っている(こちらで検索してみよう🐰)
これらの国会質疑では、接種後症状の存在を示す根拠としてメディアの報道が引用されており、特に2013年3月に報道された杉並区の中学生の症例や子宮頸がんワクチン被害者連絡会が要望書を提出したことが具体例として言及されている。
この時系列が示すのは『定期接種化前後に接種後症状が社会問題として可視化された』という状況ね🐰特に、国会で議論されたことは安全性について説明をする必要を生んだ(しかも7月を目処にという期限を切って。
なぜ説明できなかったのか
ワクチン接種後に報告された症状が、ワクチンの副反応として因果関係を持つかどうかは、一般に次のような観点から評価される。
① 時間的関係性
接種と症状発現の時間関係が一貫しているか。
② 関連性の強さ・用量依存性
接種回数や曝露量と症状発現の頻度に関連があるか。
③ 副反応としての特異性・一貫性
同様の症状が複数の症例で一貫して観察されるか。
④ 生物学的・病理学的妥当性
症状がワクチンの作用機序や病理学的変化として説明可能か。
これらを総合して、副反応疑いが因果関係を持つ副反応かどうかが評価される。
しかし2013年当時に提示されていた症例群では、
症状の発症時期にばらつきがあり時間的関係が一定しない
症状の内容が多様で特異的な症候群を形成していない
病理学的あるいは生物学的機序が示されていない
といった問題があった。
特に重要なのは、
②関連性の強さ・用量依存性
を評価するためのデータが存在していなかったこと🐰
具体的には、
接種回数と症状発現の関係
接種者集団と非接種者集団の比較
発症頻度の疫学的評価
といった、因果関係の強さを評価するための疫学的データが存在していなかった。
そのため、これらの問題となった症例群は『副反応の可能性を示唆するシグナルではあっても、因果関係を示す証拠としては評価不能』だったし同時に『因果関係を否定する(推定する)根拠も存在していなかった』🐰
行政は安全性を『根拠をもって説明する』ことができなかった。
まとめ
2013年当時の状況は
副反応の可能性を示唆するシグナルが存在した
ワクチン接種後症状として因果関係を示す科学的証拠はなかった
特に、接種と症状の関連の強さ(用量依存性)を評価する疫学データが存在していなかったことが致命的であった。そのため
『ワクチンの安全性について問題がある・問題がない』いずれの説明も、当時の時点では根拠をもって行うことができなかった。
一方、
定期接種化
患者団体の活動
メディア報道
国会での議論
によって、行政には安全性について説明する責任が生じた
つまり2013年の状況は、説明する責任だけが先に生じ、説明するための科学的根拠が存在していないという状況になるね🐰
この構造が理解できれば、なぜ2013年に積極的勧奨が中断されたのかだけでなく、
なぜその後、積極的勧奨が再開されたのか・その根拠も自然に理解できるだろう。
この点については、また次回以降で説明するわ🐰
今回の参考文献
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