見てわかるHPV (12)子宮頸がん検診の細胞診と組織診の結果が異なる可能性はどのくらい?

細胞診と組織診の結果が異なると不安になるのはわかる
アマミノクロウサギ 2025.11.07
誰でも

子宮頸がん検診・細胞診では『子宮頸部にある予想される病変(程度)の可能性』として診断され、コルポスコピー+(必要なら)生検によって確定的な診断がなされる。

細胞診は確定診断ではない(オーバー・アンダーどちら側にも診断することがある)
コルポスコピー+生検による診断も絶対ではない(見逃すことがある)

これらのことは置いておいても、細胞診から予想される結果と組織診による結果が一致しなければ不安になることがあるだろう。

イングランドの検診疫学から、1年の間に『検診(細胞診)→精密検査(コルポ)』と行われたケースでどの様な診断となったのかを見てみよう。ざっくりとした肌感覚はわかるはずだ。

ネタはこれ

イングランドでは子宮頸がん検診の方法として、『細胞診単独』→『細胞診+HPV検査トリアージ』→『HPV検査単独+細胞診トリアージ』と変遷してきた。検診の方法アルゴリズムによって疫学も変わる。今回は、現在の日本で一番多く行われてるであろう『細胞診+HPV検査トリアージ』時代の数値を引っ張ってきた(ここ2012年のデータ)。円グラフ二つで一発勝負ね🐰

前提:コルポスコピー検査をされるのは『軽度の細胞診異常+HPV陽性』か『深刻な細胞診の異常がある』場合

これが『細胞診+HPV検査トリアージ』の基本的なアルゴリズムになる。

・細胞診:軽度の異常とは日本でいう”ASC-US”と”LSIL”と同等になり、軽度の異常のみでは『高度異形成・上皮内がん』がある可能性は低すぎるから(コルポをする意味がない)ハイリスクHPVが陽性の人だけ『可能性がある』としてコルポにまわされる。

・細胞診:深刻な異常とは日本でいう"ASC-H"と”HSIL"に”子宮頸がん”と”腺癌系の変化”になる。この場合『高度異形成・上皮内がん(以上)』がある可能性が高いから、HPV検査の結果によらずコルポにまわされる。よくHSILでHPV検査しないのはなぜといった場合の理由がこれ、コルポ適応の判断に影響を与えないから。

子宮頸がん検診は『高度異形成・上皮内がんを見つけて予防的治療に繋げる』のが目的だから、高度異形成・上皮内がんの存在の可能性を軸にそのアルゴリズムが決まっている。ここでよく誤解があるのだが

コルポをするのは必ず『高度異形成・上皮内がん』が存在する可能性に対してだ🐰

軽度異形成を見つけても子宮頸がん予防にはつながらない。細胞診の結果予想される病変が『軽度異形成』であっても、コルポをするのはその中に『高度異形成・上皮内がん』が存在する可能性があるから。つまり、細胞診で軽度異形成が予想されてコルポを行った場合でも『高度異形成・上皮内がん』が見つかった時が『検診+検査としては当たり』ということ。

この辺の認識は一般と異なるはずだ。

ここまで理解した上で見てみる

細胞診で正常でない(+HPV検査で陽性だった)場合

日本でいう”ASC-US”と”LSIL”+HPV陽性・と"ASC-H"と”HSIL"以上どちらかでコルポを行った場合。細胞診異常の大多数は”ASC-US”と”LSIL”だから、そちらを多く反映している。

(一年の間に)細胞診で異常が見つかってコルポを行った場合

・0.1% 子宮頸がんが見つかり

・6.8%から上皮内がん(SSC系・腺がん系)が見つかり

・10%から中等度異形成がみつかり

・26%から軽度異形成が見つかる

がんにつながる様な変化(CIN2+)は15%強6-7人に1人から見つかる。

CIN2+が当たりとすれば、全体での正答率は15%ということだ。

細胞診で『深刻な異常がある』と診断された場合に限ると…

・ざっくり80%強でがんにつながる可能性のあるCIN2+と診断される・

・がんとしんだんされることが2.5%

・上皮内がんと診断されることが半分以上

CIN2+を当たりとするのであれば80%であるとすれば正答率は80%ということになる。

***

細胞診:軽度の異常の異常+HPV陽性の場合のグラフは(年度も異なり)参考程度にしておくが、CIN2+の割合が何割か小さくなると考えていい。

CIN2+を正解とすれば、12%の正答率となる。予想病変から<CIN1を正解とするのなら80%といったところだ。

結局、何を一致として取るかにかかっている

が、これが肌感覚としていいだろう。

重要なのは子宮頸がん検診+検査はCIN2+の可能性を中心にそのアルゴリズムが考えられているということ。コルポをするときは常にCIN2+が存在する可能性があるときということだ。

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