子宮頸部にHPVが感染することによる負担はどの程度?

公開されているがん統計から罹患に関して簡単に見てみよう🐰5分でわかるHPV
アマミノクロウサギ(Amamino_Kurousagi) 2024.02.28
誰でも

もとの数字は全国がん罹患データ(2016年~2019年)から。2019年の数値を採用するよ。

  • 子宮頸がんと診断されたひとは全国で10879人

  • 上皮内がんと診断されたひとまで含めると34990人

  • 上皮内がんと診断されたひとは24111人

一年あたりの数値ということになるね。

毎日100人くらいが『上皮内癌です』『浸潤子宮頸がんです』と告知されているということよ🐰

🐰『多くない?』

***

日本には5000万人くらい女性がいるから、割合は大したことないよっていう人も見たことがあるから、生涯罹患率で見てみようか。計算方法は

10万人あたりの罹患率から各年齢の罹患率を算出して、0歳から89歳までの罹患率を足して生涯罹患率として算出する。(以下補足:無視してもいい)世代ごとの罹患リスクは一定と仮定する。今の30代が60代になった時の罹患率が、今の60代の罹患率と同じと仮定するって意味ね🐰違うと仮定を起きたければそれぞれで補正してもらってよし

で、グラフにすると

全国がん登録データから算出(みんなも自分でやってみよう🐰)

全国がん登録データから算出(みんなも自分でやってみよう🐰)

  • 子宮頸がん生涯罹患率は1.34%。逆数をとると75人に1人が一生のうちに子宮頸がんに罹患する

  • 上皮内がんまで合わせると生涯罹患率は4.49%。22人に1人が一生のうちに子宮頸がん・上皮内癌に罹患する

  • 差分が上皮内がんのみね🐰

HPVに感染した人の0.2%とか、HPVに感染することのインパクトを小さく見せる言説があるけど、どれほど空虚なものかわかるでしょう🐰これが現実

じゃあ、キャリアや家庭やプライベート、子供を持つことやなんやかんやで特に忙しい40歳までを見てみると

  • 18%の子宮頸がんは40歳未満で発症していて、罹患率としては0.24%に相当。

  • 上皮内がんまでいれると43%が40歳未満で発症、罹患率としては1.95%に相当。

若い世代に対するインパクトの大きさがわかるだろうか。こんながん関連疾患は他にありませんよ。

結果として日本では2019年に1700人が40歳未満で子宮頸がんと、上皮内がんまで合わせると13268人が診断された。

20代30代って人生においてどの様なステージにあるのかはそれぞれに任せるけど、毎年1700人が子宮頸がん、12000人程度が上皮内がんと診断されている。

🐰『多くない?』

***

全国がん登録データには現れないから補足するよ。

補足①

最終的に上皮内がんと診断されるまでには、異形成と診断されフォローアップを続けている人たちがいるわけよ。3ヶ月に1回、細胞診やコルポや生検されている人たちが。

ハイリスクHPV陽性者の10%でCIN2+が発症する

この数値を採用すれば(他の数値を採用したければどうぞ)上皮内がんと診断された人の10倍以上の人たちが、異形成と診断されたりしてフォローアップ受信を続けている人たちがいるわけね。

HPV感染から子宮頸がん罹患の疫学によると、性的にアクティブな女性の8割が20代のうちにハイリスクHPVに感染している。

上皮内がんの数字も大きいけど、背景にはその10倍以上の異形成の罹患者がいるよね。これは統計に出てきていないよ🐰

🐰『多くない?』

***

補足②

異形成・上皮内がんは基本的に無症状。だから健康な人を対象に検診することでしか見つからない。検診をやめたら罹患率は0に近くなる。検診をやることで発生する『感染症』ということができる。日本の上皮内がんの罹患の中央値は40〜45歳にある。これは検診が導入されている国としては高めの数値になる。英国なら30代前半にあって、検診受診率の差で説明できる。検診率を無視した感染から発症の自然史からみると、日本には見つかっていない高度異形成が20代後半〜30代に山ほどあるということね🐰

今後検診を強化『若い世代で積極的に受診率増を目指す』『HPV単独検診法の導入で感度を上げる』した場合、上皮内がんの罹患率(診断率・認知率)は今の数倍になってもおかしくない。検診が強化されれば罹患率が上昇する。簡単な理屈だね(その分子宮頸がんが減少するのを忘れてはいけない)。

検診の強化で子宮頸がんの負担は減るけど、上皮内がんの負担は増加するよ。特に40歳未満でね🐰いまでも2%の人が40歳までに上皮内がんに罹患しているけど、5%くらいになってもおかしくない。

🐰『多くない?』

まとめ

コンジローマとか肛門がん・膣がん・外陰がん・中咽頭がん、HPVに感染することの負担は色々あるけれど、子宮頸部関係に絞ってもこれだけのものがある。子宮頸がんは検診で予防できると同時に検診によっても負担が発生する。数だけ見たら圧倒的に検診によって発生する負担が大きい。これが無視できない大きな負担であることは、簡単にわかるだろう。

全女性の5%近くが、がん・上皮内がんと診断され、10%〜が異形成と診断されている。HPV感染症は大きな公衆衛生上の問題で、検診がある(子宮頸部がある)が故に特に女性にとって大きな負担となっています。

***

どの様に対処できるか知っているよね🐰簡単な話なんだけどね

定期接種の対象で接種すると半端なく有効なワクチンがあるんですけどね。日本に住んでいたら、全ての女性が対象ですよ。簡単な話ですね🐰

無料で「アマクロ疣研」をメールでお届けします。コンテンツを見逃さず、読者限定記事も受け取れます。

すでに登録済みの方は こちら

読者限定
ワクチンを接種した人たちには子宮頸がん検診を減らした方がいいのだろうか...
読者限定
HPV検査単独法によるに子宮頸がん検診は5年も間隔をあけても大丈夫?
読者限定
見てわかるHPV④子宮頸がんの発症率:北欧諸国をまとめてみた
読者限定
見てわかるHPV③HPVワクチンが子宮頸がん検診に与えたインパクト
読者限定
HPVに関するちょっとした疑問に答えるシリーズ④
サポートメンバー限定
HPVの存在証明(11)分子生物学の導入
読者限定
バングラデシュはやるよ🐰
読者限定
日本の子宮頸がんは検診でかなりの部分予防されている🐰