HPVの存在証明④ウイルス学の登場

濾過滅菌できないほど非常に小さく・自己増殖できない感染性病原体(濾過性病原体)としてウイルスは始まる。電子顕微鏡写真も分子生物学的同定・検出もそこには存在しなかった。
アマミノクロウサギ(Amamino_Kurousagi) 2024.01.18
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病気が神々の怒り・悪魔の呪いや星の配置、あるいは瘴気(ミアズマ)によって引き起こされると考えられていた時代のあと、人類は病気の多くが感染性病原体による『感染症』であることを知ることになった。

顕微鏡の発明され(レーウェンフック)肉眼では観察できない微生物が発見され、微生物学が始まった。人々は病気にかかった人のサンプルに特定の微生物が観察されることから(その感染実験を行うことと併せて)感染性病原体が病気の原因になっていると漠然と理解してはいたが、その因果関係が決定的に示されるまでは長い時間を必要とした。

ある観察された微生物がその病気の原因になっていると、その因果関係を証明するには、それに対する反論を徹底的に排除する必要がある。あらゆるそれ以外の可能性に関して反証を提出する必要がある。その方法論についてアイディアを提唱したのがヘンレであり、実証したのがコッホであった。

そのコッホが示した『結核菌と結核の因果関係を証明するプロセス』とそれをまとめて定式化したのが『ヘンレ・コッホの原則』となる。

コッホの示した方法論は強力で、ある種の病気は微生物、例えば原虫、真菌、細菌、スピロヘータによっておこること(因果関係)が次々と示されることになる。この科学的な勝利は非常に大きく、多くの研究者が、原因となる感染性病原体が発見されていないも疾患を含め、すべての感染症はすでに認識されているものと同様の微生物によって引き起こされるに違いないと考えるようになった。

実際はかなり異なる🐰

結核菌と結核の因果関係をほぼ完璧に示した1884年の時点では、コッホはのちに原則として確立することの因果関係証明の方法の厳密な適応を提案したが、1890年に『コッホの原則』として定式化した時点で既に、その例外が存在すること、病原体と病気の因果関係の推定・証明にコッホの原則の厳密な適応が必要でないことを指摘している。

コッホの原則に従わない病原体たちとしてこちらにまとめた。特に重要な例を二つ挙げてみよう🐰

  • コレラ菌とコレラ:コッホ自身が純粋培養(分離・単離に成功した)にもかかわらず、コレラ菌に感受性のある動物がなく、感染性・病原性の確認ができなかった。コッホ自身がコッホの原則を満たせないことがわかっていたものだ。

  • 梅毒スピロヘータ:現在に至るまで、完全無細胞系の純粋培養ができていない。もちろん、分離や単離は行われておらず、感染性・病原性の確認がなされていない。

これらの病原体に関してはしばしばウイルスやHPVに対する反論と同様に『細胞を使わない分離・単離したサンプルがないだろう?』・『分離・単離した病原体で感染性・病原性が確認されていないでしょ?』などの指摘が成り立つ。

コレラや梅毒が存在しない。または、コレラ菌や梅毒スピロヘータが原因となっていない(証明がない)と、その診断法や治療法・予防法まで意味がないと主張するのことに妥当性があるかは読者に任せよう。単純にコッホの原則によらない方法でその病原体と病気に因果関係があることが示され、そのエビデンスが担保する範囲で受け入れられているだけの話だ。

無細胞系の分離・単離したサンプルがなく、分離・単離した病原体で感染性・病原性が確認されていない感染性病原体など山ほどある。

これが前回までのまとめ。

***

今回は顕微鏡で観察できる様な病原体・病原性微生物と病気の因果関係の研究の過程で、顕微鏡で観察できない、それまでの病原性微生物と異なる性質をもつ感染性病原体としてウイルスが存在することがわかっていく、その過程を一緒に見ていこう🐰

・ウイルスの特徴

・例えば『ポリオウイルス』・『天然痘ウイルス』

・コッホの原則から見た場合ウイルスが持つ問題点

・まとめ

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