HPVに関するちょっとした疑問に答えるシリーズ④
子宮頸がんの発症が40〜50代でピークを迎えたのち減って、70代くらいからまた増えるのは何故?
HPV centreより、年齢別子宮頸がん罹患率
日本の子宮頸がん罹患率をみると、40代前半にピークがあることと、高齢者側に再度ピークがあるのが特徴と言える。
実際のところは、高齢になる程がんになりやすいよねという『一般論』以上のことはないと言えるし『例外的に30代から50代の罹患者が異常に多い癌である』という話ではあるのだが。
せっかくなのでもう少し考察をしよう。
HPV centreより、年齢別HPV陽性率(感染率じゃないよ!)←細胞診正常集団において
HPV検査の陽性率も性的に活動的な20代に陽性率のピークがあったあと、60歳以降に小さなピークがあると言える。
HPV検査の陽性率を『新規感染率』や『感染率』として捉えると間違いなのは、こちらで説明した。持続感染している上に、検出感度以下の感染がほとんどであることが推定できるからだ。この陽性率は、検出されるような感染(感染機会から日が浅いもの・持続感染しているもの・再検出されているもの)を合わせて見ているということ。
高齢側の子宮頸がん罹患やHPV検査陽性の増加は免疫システムによる制御の衰えを示しているのか?
高齢者のHPV検査陽性率の増加は、もし『55歳以上で新しい性的パートナーを持つことが、35歳から55歳よりも多い』これが真であれば、新規感染イベントを反映していると解釈できる。が、どの程度蓋然性があるだろうか?
一般には、高齢者において、免疫システムの全体としての衰えを反映して、免疫によって制御されていたHPVの抑制がある程度解除されるからだと解釈されている。
子供のときに水疱瘡に罹患して、中高年以降に帯状疱疹として再発症するのと考え方は同じだ。壮年期の帯状疱疹の罹患率は高齢者より少ない。
高齢側の子宮頸がんはHPV陰性癌が多い?
HPV陰性がんとは何か?これは別に議論が必要だ。
・HPV検査で陰性の子宮頸がんはHPV非関連癌(HPVがその発症に関係していないか?
これは簡単にそうとは言い切れない。子宮頸がんからどのくらいHPVが検出されるか見た論文では、その検出率は80%ぐらいから99.7%までの開きがある。ここでも、検出感度の問題があるし、高度異形成と比較しても、がんになったときHPV検出率が落ちることを説明できる合理的な理由がある(そのうち説明するね🐰)
子宮頸がんの圧倒的大部分はHPV関連癌である。これが現時点でのコンセンサスだ🐰
高齢側の子宮頸がんは本当に子宮頸がんか?
何を言っているのだ🐰さん
HPV陰性子宮頸部『原発』がんは子宮頸がんに分類されてきた。子宮頸部にできれば子宮頸がんだ。
一方、その病因論においては、HPV関連子宮頸がんと子宮頸部原発がんは全く異なる。その予防法においても全く異なる。
HPV非関連子宮頸部原発がんは、ワクチンでも予防できないし、検診によっても予防できない
デンマークでの子宮頸部原発がんにおけるHPV陽性率を調べた研究では、50歳以降の子宮頸がんにおいてHPV陰性癌が一定数含まれることが示された。
・HPV関連癌がより若い人で発症しやすいがんである。という解釈も成り立つし
・50歳以降の子宮頸がんに、子宮頸部原発の子宮体癌が含まれていないか?
と、考察されている。
子宮頸部は膣から〜子宮内膜への移行組織で、そこには子宮内膜成分も十分含まれ、その面積に応じて子宮体癌が発症してくることになる。
子宮頸部に原発すれば、子宮頸がん(特に腺がん系)として扱われているよね🐰という話だ。
HPV関連癌はHPV非関連癌と全く異なる存在ということね🐰
これが今後のコンセンサスになるだろう。HPV関連癌と非関連癌は異なるがんであり、発症部位が違うだけの話だ。
これは、HPV関連癌と非関連で予後も違えば、予防法も治療法も異なることになるからだ。中咽頭がんを例にするとわかりやすいだろう。
HPV関連中咽頭がんは、放射線や化学療法に対する反応性がよく、予後も比較的よい。HPV非関連がんと比較して、ステージングも変わってくるわけね。
ここまで、説明すると、あとは簡単だ。
高齢者の子宮頸がんもHPVが原因ですか?
日本での高齢者の子宮頸部原発がんのHPV陽性率に関するデータが不足しているが①大部分がHPV関連癌であることは変わりがなく②一定数の子宮体癌の紛れ込みがあり③一部、HPV非関連の子宮頸部原発がんがあるだろう。
全てのHPV関連がんのうち、子宮頸がんが占めるのはどのくらいか?
世界的に見た場合、HPV関連癌のうち9割が子宮頸がんだ。先進国に行けば行くほど、子宮頸がんが減少する傾向があって①子宮頸がんは検診でその大部分が予防できることが原因となる。その分、そのほかのHPV関連癌が増加することになる。
また、子宮頸がんはそのほとんどがHPV関連癌であるため、子宮頸がん発症数=HPV関連がん発症数になる。一方、子宮頸部以外のHPV関連がんに関しては、子宮頸部ほどには適切に診断されていないと推定されている。つまり、統計に出てきている数値としては相当過小評価されていないか?という議論だ。
全体で見た場合、全てのがんのうち5%がHPV関連がんで、そのうち9割程度が子宮頸がんである。このような数値が受け入れられているよ🐰
HPVが関わらない子宮頸がんはあるのでしょうか?
再度強調すると、HPV関連がんと非関連がんは別の実態と言える。子宮頸がん=HPV関連の子宮頸部がんとして捉えられるようになっており、その予防法も治療法においてもHPV関連であることが前提となっている。
そして、HPV非関連の子宮頸部原発がんは、別の扱いということになるね🐰
こんな感じ
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