『彼氏ができました。HPV ワクチンを接種した後、いつ頃から性交渉をしてもいいですか?』
3回接種したことによる効果が十分に発揮されることになるのは、もちろん3回接種した後ということになる。ワクチン接種プログラム全体の意味ということになれば3回接種後・世界各国から半年後以降ということになるが…
1回接種プログラムを開始した英国やオーストラリアの様な国では、そもそも接種に半年かかることはなく、1回接種して終了だ。1回接種後のどこからかのタイミングで効果が発揮されていることになる。
また、英国では45歳までの大人では、6ヶ月から1年間隔での2回プログラムを採用している。1年とさらに間隔は空いているし、大人の方が『いつから十分な効果があるか』の問題はより深刻度が高いと言える。
どう考えたらいいのか?行ってみよ〜🐰
元々いつから効果がでるかが重要ではないHPVワクチン
基本的なワクチン接種タイミングは、感染機会の発生より十分に早いタイミングになる。HPVワクチンの予防できる、尖圭コンジローマやHPV関連がんの原因となるHPVの感染の主な機会は、皮膚や粘膜の繰り返される密な接触になる。その様な『ロマンチックな(🐰表現)』接触は思春期以降に急速にその頻度を増す。そのために。HPVワクチンの一般的な接種タイミングが定期接種の時期として設定されている。
小学校6年生から高校1年生、通常の接種年齢は中学校1年生
前思春期・思春期の前半部分ということね。中学校1年生であれば、大部分の人にとって『ロマンチックな』接触・特に性交渉は将来に起こることで、ワクチンを接種してから十分な時間があると期待できるだろう。
『性交渉をするために』ワクチンを接種するのではなく『性交渉をしていないから』ワクチンを接種するわけだ。
ここでは『HPV ワクチンを接種した後、いつ頃から性交渉をしてもいいか』という発想がそもそも存在しない。接種対象になったらなるべく早く接種する。これが基本になり、その後いつ感染機会があるかは重要ではない。
実際は、ほとんどのワクチンも『接種は設定された接種タイミングがきたら、なるべく早く接種し、その後いつ感染機会があるか』は重要ではない。子供の頃の定期接種も季節性のインフルエンザ接種もそうだ。
留学や特別な渡航先に行く前のワクチン接種も『接種が完了していること』が重要だし、空港におけるワクチン接種も発想は同じね🐰
元々いつ感染したかわからないHPV
HPVの感染がわかった時、例えばHPV検査で陽性になった・イボなどの症状として認知された時から『そのHPVにいつ感染したか?』がわかることはない。
最近新しいパートナーを持った。HPV検査をすれば、新しいHPVが検出されることもあるだろうし、それから数ヶ月〜1年以内にコンジローマや異形成が発症すれば、そのパートナーから感染した可能性『も』あるだろう。
一方、HPVは検出率以下で持続感染し、時間を空けて検査で陽性化したり・発症したりすることがある。そのHPVには過去、過去全ての性的なパートナーやさらにはそれ以前の(確立は相当低くなるだろうが)”家族内感染”や”性交渉によらない感染”によるものを含むかもしれない。
①HPVは感染がわかった時から逆算していつ感染したか全くわからない。
②HPVは感染した時にどの程度で認知・検査が陽性になるのか目安がない。
これは同じことを二つの方向から言っているだけなのだが🐰
だからHPVワクチンがいつから効くか調べる方法がない
そのため、臨床試験などにおいてもワクチン接種後どの時点から効果が発揮されているかを調べることができない。
普遍的に感染イベントが十分な数発生する場合(コロナを想像してみよう)臨床試験の対象集団に『ごく普通の生活』をしてもらうだけで、ワクチン接種後すぐから感染機会が発生する。その時、感染した人を検査していると、ウイルスゲノムが検出されたり・症状が出たりする人が一定数出てくることになる。
接種直後からしばらくの間(2週間程度)ワクチン接種者と非接種者の間で、感染(発症)頻度の違いがない時期が存在し、その後、差が出てくる様になるだろう。その様なワクチンが『効果がある』とされるし、その差のない時期が『ワクチンの効果が出るまで』の期間だ。
①HPVは感染がわかった時から逆算していつ感染したか全くわからない。
②HPVは感染した時にどの程度で認知・検査が陽性になるのか目安がない。
加えると、ワクチン接種後に性交渉を持ってもらわないと感染機会すら発生しないことは、感染のタイミングも接種後に感染イベントが普遍的に存在しないことをしめす。
ワクチンがいつから効くか調べる方法がないということになる。
いや、調べることはできるのだけど、その物差しは『少なくとも年単位』になっている。接種後3年間で十分効果があることがわかるからね。
『年単位』🐰
『HPV ワクチンを接種した後、いつ頃から性交渉をしてもいいですか?』この様な問題に答えるのには不十分であることがわかるだろう。
HPVの感染機会は自分でコントロールできることが問題
なぜ、HPV感染症においてワクチンの接種(特にキャッチアップ接種)から効果が発揮されるまでの時間が重要かと言えば『HPVの感染機会の多くは自分でコントロールできる』ことにある。
新しいパートナーを持たなければ、新しいHPVに感染するリスクは大きくない
HPV ワクチンを接種した後、新しいパートナーと性交渉をするタイミングが、ワクチンの効果が発揮さされるタイミングとなり、基本的に自分でコントロールできる。できるのであれば、したいと考えるのが普通だ。
どの様な指導がなされているか?英国NHSの場合
25歳までの1回接種プログラム・45歳までの1年間隔の2回接種プログラムを運用する英国NHSにおける『HPVワクチン接種のガイドライン』を調べてみたが、ワクチン接種後いつから性交渉をして良いかの記述は存在しなかった。
これまでに示した議論を踏まえると当然と言え、いつから効果があるかは議論とならない🐰
唯一、45歳まので男性と性交渉をする男性への接種における過去のガイドラインにおいて『性的なコンタクトを控えるか・コンドームの使用を徹底させた上で速やかにワクチン接種を完了させる』となる。これも、接種後いつから効果が発揮されるかは論じていない。
では、どの様に考えればいいだろうか?
①一回接種後『しばらくすれば』ワクチンの効果が十分には発揮されると考えられる。これは、一回接種プログラムを導入されていることからも明らかだ。2回目・3回目の接種はワクチンの基本的な効果発揮において必要でない。
②2回目・3回目の接種は、長期的な効果維持に関してより確実にするためのものと言える。効果が発揮されるかどうかのものではない。
③その上で、HPVワクチンに関して、いつから効果があると言えるか、実験や観察研究上のエビデンスは存在しない。
そのため、もし指導をするとすれば、そのほかのワクチンにおける知見や外来抗原に対する免疫システムの応答を参考にすることになる。
ほかのワクチンにおいても(インフルエンザなどを想定しよう)『接種後2週間くらいは免疫の成立に時間がかかります』ていうよね🐰
複数回接種する様なワクチン(HPVを含めて)、1回目を接種した後1ヶ月ほど経った時に2回目を接種する。1回目の抗原曝露に対する反応が一巡するのが1ヶ月後くらいになるからだね🐰
ウサギでポリクローナル抗体の作製を行う様な場合、2週間おきに抗原を接種し続ける。接種前に検出できなかった抗体が、抗原接種後2週間で検出可能だ。
この様な例を参考にすると『ワクチン接種後2〜4週間経てば、血中の中和抗体は十分誘導される』と言ってもいいだろう。そして、HPVワクチンの効果は完全に血中の中和抗体の濃度に依存する。
まとめ
ワクチンは接種するべきタイミングが来たら、なるべく早いタイミングで接種するのが基本だ。接種後に普遍的に訪れる感染リスクを予防するためには、十分に早いタイミングで接種するのが重要と言える。
一方、HPVは感染リスクは自分でコントロールできる。特にキャッチアップ接種においてワクチンの接種後十分に効果が出てから、感染機会・性交渉を持ちたいとする状況も十分考えられる。
ワクチンは一回目接種後しばらくしてその感染予防効果を発揮すると考えられる。幸い、日本では3回接種プログラムになっている。2回目の接種の後であれば、免疫が誘導される期間も十分と言えるし、2回目のブースター効果も期待できる。良い目安と言えると🐰さんは考える。
実践的には『2回目のワクチン接種後』とするのが良いのではないだろうか?
十五歳未満の2回接種プログラムにおいては『十分に感染機会に先行して』ワクチン接種がなされているとして、特に言及することはしません。
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