性交経験がなくても、子宮頸がんになることはありますか?

性交経験がない人にも、子宮頸がん検診は必要なのか
アマミノクロウサギ 2026.08.17
誰でも

「性交渉の経験がないので、子宮頸がん検診を受けるメリットはごく少ないと考えています。それでも、子宮頸がんになる時はなるのでしょうか」

マシュマロ もぐもぐもぐ🐰

マシュマロ もぐもぐもぐ🐰

「性交経験がなくても子宮頸がんになる可能性はゼロではないのだから、検診を受けるべきだ」という説明や「性交経験がなければ検診を受けなくてよい」との説明を見ることがあります。今回は、この問題について整理された説明をすることが目的ね🐰

***

結論からいえば、検診を受けるかどうかは本人が決めてよく、受けることも、辞退することも選択肢になる(受けないといけない・受けてはダメではない)。発症リスクと検診の利益・負担は、他者が受診の可否を決めるためではなく、本人が判断するための材料です。

(そのことと誰に推奨するか、どのような検診システムにするかは、かぶってはいるけど別問題)

英国のNHS Cervical Screening Programme(NHSCSP)は、25歳以上の子宮頸部をもつ女性全員に推奨し招待しながら、性的接触を一度も経験していない人が子宮頸がんを発症する可能性について『ゼロではないが、非常に低い』と説明し、本人が検診の招待を辞退することも選択肢として示している。本稿では、この英国の制度・説明を材料に、どのように考えればよいかをまとめるよ🐰

「性交経験がない」とは、どのような意味か

まず(子宮頸がんのリスクと関係がある)「性交経験がない」という言葉の意味を整理するよ🐰

NHSCSPは、子宮頸がんの主な原因であるHPVは、挿入を伴う性交だけでヒト・ヒト間で感染するのではなく、以下の例を挙げている。

・膣性交

・オーラルセックス、アナルセックスに加え

・性器周辺を含む皮膚どうしの接触や

・性具の共有も「性的接触」に含め

・相手の性別も問わない(最近レズビアンなのに検診で異形性が見つかったって話があったね)

「挿入性交を経験したことがない(狭い意味での性交経験がない)」ことと「HPVに曝露する可能性のある性的接触を一度も経験したことがない」ことは同じではないよ

本人が性交とは認識していない接触や、同意のない性的接触―性的虐待や性暴力を含む―も、医学的にはHPVへの曝露機会となり得ます。

過去に性的接触があり、現在は性交渉をしていないという場合も、当然のことながら「性的接触を経験していない人」には当たらない。NHSCSPも、この場合には引き続き検診を受けることを勧めている(感染した可能性によるリスクは生涯続く)

発症リスクは非常に低いが、ゼロではないとは

子宮頸がんのほぼすべては、発がん性のあるHPVが子宮頸部に持続感染することによって起こります。そのため、HPVに曝露する可能性のある性的接触が一度もなければ、子宮頸がんを発症するリスクは非常に低いと考えていいよ🐰

ただし、HPVは主に性的接触によって感染するけど、それ以外の感染機会を完全に否定できるわけではない。母子感染や自己接種(体の別の部位からの移行)なども検討されているけど、子宮頸がんの発症にどの程度寄与するかは明らかではない(性的接触全く未経験のHPV関連子宮頸がん罹患率の精度の高いデータがない)。また、個々の感染について、どのように感染したのかを特定することもできない🐰

そのため、性的接触を一度も経験していない人にも、HPV関連の子宮頸がんが生じる可能性を厳密にゼロとはいえず、さらに、子宮頸がんにはHPV感染によらない非常にまれながんもある。

こうした点から、NHSCSPも「リスクはない」ではなく「非常に低い」と表現しています🐰

「ゼロではない」は、検診を勧める理由にはならない

発症する可能性がゼロではないことと、集団として検診を勧めること・検診プログラムの対象とすることとは別の問題になる。

検診には、検体採取に伴う身体的・心理的な負担、陽性結果による不安、その後の再検査や精密検査、さらに制度を運用するための費用があります。検診が推奨されるためには、対象集団に一定以上の発症リスクがあり、検診によって得られる利益が、これらの負担や不利益を上回る必要がある🐰

真にHPV感染によらない子宮頸がんは非常にまれであり、HPV陰性がんを対象として集団検診を行うことの利益や有効性は示されていません。英国の子宮頸がん検診はHPV検査を入口としており、HPV陰性がんは、そもそもこの検診によって予防することが想定された主な対象ではない。したがって、HPV陰性がんが存在すること自体は、性的接触を経験していない人にも検診を勧める根拠にはならないよ(HPV検査単独法は成立しなくなるよ)。

実際、子宮頸がんを発症する可能性が完全にゼロではないにもかかわらず、英国では25歳未満には検診を行わず(オランダでは30歳未満はしない)65歳を超えた人にも一定の条件を除いて一律には勧めていない。

検診は、あらゆるわずかなリスクを見つけるために行われるものではない(ここがポイント🐰)

一律に招待することと、受診を強制しないことは両立する

NHSCSPは、対象年齢にある人を性的接触歴によって選別せず、原則として一律に検診へ招待しています。性交経験があるか、どのような性的接触があったかを、招待の条件として申告させることはないよ。そもそも、そのような経験の有無を制度が客観的に知ることはできん🐰。一方、子宮頸部が手術によって摘出されているなど、検診の対象にならないことを客観的に確認できる場合は、招待の対象から外れます。

招待を受けたからといって、検診を受ける義務が生じるわけでもない。本人は今回の検診を受けないことも、今後の招待を停止するよう申し出ることもできます。その際に、性交経験がないことを理由として説明する必要も、何か「正当な理由」を示す必要もない。希望すれば、後から再び招待を受けることもできる。

対象者全員に案内を送り、そのうえで本人が受診するかどうかを選ぶ。この仕組みによって、検診の機会を広く保障することと、個人の自己決定を守ることを両立させているわけね🐰

日本には、NHSCSPに相当する全国統一の招待・追跡システムがなく、自治体検診、職域検診、人間ドックなどが分かれて運用されています。そのため、英国と同じ仕組みをそのまま導入することができない。

とくに職域検診で、子宮頸がん検診を受けない理由として「性交経験がない」と勤務先に説明させるような運用は、本人に不必要な性的履歴の開示を求めることになり、逆に、若い人が検診を受けることによって「性交経験があると周囲に思われるのではないか」と感じ、受診をためらうこともあり得る(どちらもSNS上で確認した)。

検診を受けることも、受けないことも、本人の性的経験を表明する行為にしたらいかんってこと🐰

では、どう考えればよいのか。結局どっちよ🐰

HPVに曝露する可能性のある性的接触を一度も経験していないのであれば『子宮頸がんを発症するリスクは非常に低く、検診によって得られる利益も非常に小さい』と言えます。①そのことを踏まえて検診を受けないと決めることも、②わずかに残るリスクを考えて受けると決めることもでき、どちらも合理的。本人がどちらを選ぶかについて、すべての人に共通する唯一の正解があるわけではありません。

日本の運用上は(A)20歳以上の全ての女性に検診を推奨し招待する。(B)その上で、検診を実際受けるかどうか、最終的に決めるのは本人だ。その判断のために、

①リスクと検診の利益・負担について正確な情報が提供されるべき(性的接触未経験での検診はオプションになりうること)で

②性交経験を他者に説明したり、受診または辞退について「正当な理由」を示したりする必要はあるべきではない

この説明と検診プログラムとしての実装が、十分になされていないことが、日本でこの問題が残り続けていること、冒頭のマシュマロのような質問が出てくることの原因でしょう(①だけではなく②も重要な条件であることを忘れない)

なお、不正出血や通常と異なるおりものなどの症状がある場合は、定期的な「検診」とは別の問題。性交経験の有無や検診を受けるかどうかにかかわらず、医療機関に相談するべきだ🐰

特に20代では、実際検診の受診率は高くなく、定期検診だけでは(前がん病変として)捉えられない場合がある。子宮頸がんによる死亡を防ぐためには、検診に加えて、症状を見逃さないことも非常に重要ね。もちろん、これはHPV非関連の子宮頸がんについても同じ🐰

日本でも、つい最近になって指針の改正が検討されている

実は日本でも、2026年7月16日に開催された厚生労働省「第47回がん検診のあり方に関する検討会」で、性交経験のない人への情報提供を、国の「がん予防重点健康教育及びがん検診実施のための指針」に追加する改正案が示されているよ🐰

HPV感染の原因となる性的接触をきちんと説明が必要だろう。 生涯未婚率+性交経験がないが、リスクが低いかどうかは検討が必要だ。

HPV感染の原因となる性的接触をきちんと説明が必要だろう。 生涯未婚率+性交経験がないが、リスクが低いかどうかは検討が必要だ。

改正案の内容は、次のようなもの…

  • 性交経験のない人も、子宮頸がん検診の対象から一律には除外しない

  • 性交経験がなくても、子宮頸がんになる可能性はゼロではないため、検診自体は推奨する

  • 一方、性交経験のある人よりHPV感染の可能性と子宮頸がんの発症リスクは低い

  • したがって、検診によって得られる利益も、性交経験のある人より小さいと考えられる

  • このことを『受診勧奨の段階で本人に伝えたうえ』で、検診を受けるかどうかを検討してもらう

つまり、今回ここまで説明してきた考え方は、日本の公的な検討とも基本的に一致しています。ただし、これは2026年7月につい最近示された指針改正案であり、現時点では確定した改正指針ではありません。この情報提供を指針に明記する必要が今になって検討されていること自体、性交経験のない人への説明が、これまで自治体検診や職域検診の現場で十分に整理され、徹底されてきたわけではないことを示しているわけ🐰

国立がん研究センターの一般向けページをみてみると

  • 現在性交渉がなくても、過去に経験があれば検診が必要

  • 性交経験が一度もなければ発症リスクは極めて低い

  • その集団に検診が必要であることは、これまで示されていない

  • 説明を受けて、検診を受けるか相談できる

  • 症状があれば検診ではなく医療機関を受診する

以上が、すでに記載されている。

しかし、この説明が検診の案内や実際の運用に十分反映されていないのが現状。

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