英国におけるHPVワクチン接種の男子への拡大をめぐる議論(前編):男子への定期接種拡大は費用対効果が悪い(2017年)
英国では2008年に、12~13歳の女子を対象とするHPVワクチンの定期接種が開始されており、90%弱の高い接種率を達成していた。その後、HPVが子宮頸がんだけでなく、中咽頭がん、肛門がん、陰茎がんなど、男性にも生じる疾患の原因となることを踏まえ、男子にも定期接種を拡大すべきかが検討された。
英国の予防接種政策に科学的助言を行うJoint Committee on Vaccination and Immunisation(JCVI)は、
・2017年の暫定勧告では、女子の接種率が高く、男子も集団免疫による間接的な防御を受けているため、男子への拡大は費用対効果を満たさないとして、これを推奨しなかったが
・翌2018年には一転、JCVIは男子への接種拡大を勧告し、イングランドでは2019年から男子も定期接種の対象となった。
この間に、何が議論され、なぜ結論が変わったのだろうか。男子への接種の費用対効果を大きく改善させるような新たな科学的知見が得られたわけではない。変化したのは科学的事実そのものではなく、それを政策判断に結びつける際の評価の考え方だった🐰
英国における男子へのHPVワクチン接種拡大は、費用対効果評価が科学だけでは解決できない調整が必要な(価値中立的な)計算ではなく、政策的・行政的判断を内包することを示す一例になる。
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- なぜ2017年には、男子への接種拡大が見送られたのか
- 1.評価されたのは「男子接種」ではなく「男子追加」
- 2.女子の接種率が高いと男子追加の便益は小さくなる
- 3.男子追加によって得られるQALYと、正当化できるワクチン価格🐰
- 4.前提を変えると、支払可能価格はどこまで動くのか―感度分析🐰
- 2017年時点の結論(女子のみの定期接種を継続し、男性はMSMのみを対象とする)
- 付記:効能にない中咽頭がんと集団免疫を、費用対効果に含めてよいのか
- 次回2018年に男子への定期接種の拡大が決定するが
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