HPVの存在証明⑥伝染性単核球症の場合
サムネはJ Bacteriol. 1966 Mar; 91(3): 1366–1368.より
前振り
ある病原体が特定の病気の原因であるとその因果関係を示すにはどうしたらいいのだろうか。
この過程で有名な「コッホ・ヘンレ」の法則としてその方法の原則が示された
・その病原体が、その病気のサンプル中に常に見つかること
・その病原体が”感染性を有する物”から(分離の結果)単離されること
・単離された病原体で病気が再現できること(動物モデルなどを用いての感染実験)
これが満たされるのであれば『ある病原体が特定の病気の原因である』と言えることを示したと言える。言い換えると『それ以外の”なにか”がその病気の原因になっていること』の可能性を排除するプロセス(のひとつ)だ。反証に対する反証がなされているとも言える。
(特定の検出系で定義できる)注目している病原体以外の病原体が含まれていないと言えるサンプルを作ることが『病原体の単離』になり、それ以外(分離など)は方法論にすぎない。『病原体の単離』は概念であって、それを定義せよと言った場合、このキーワードが抜けていたら減点ね🐰(純粋なとかピュアなとか言った場合曖昧さが残る)
さて、コッホは『結核の原因として結核菌の発見とその因果関係の証明』において、その方法論としての極致を見せた。そして、この方法によって発見され病気との因果関係が示された感染症もたくさんある。
腸チフスとチフス菌・ジフテリアとジフテリア菌・ハンセン病とらい菌・マラリアとマラリア原虫・梅毒と梅毒トレポネーマ・コレラとコレラ菌
だからといって、これらの病原体は存在しないとか、これらの病原体と病気の因果関係がない、とは言えないし、その病気も無くならないし、有効な対策・検査法・治療法が意味ないものになってしまうわけではない。
コッホの原則は絶対ではないわけ🐰
子宮頸がんの原因としてのHPVが分離・単離されたのか?その単離されたHPVを使って子宮頸がんが再現されたのか?ないのであれば、HPVは(存在しないし)子宮頸がんの原因ではない
(本人に自覚がなかったとしても)コッホの原則に固執すればそのようになる🐰
話しは簡単で(プロセスは大変だが)『コッホの原則によらない方法で”HPVが子宮頸がんの原因である”』と言えることを示せばよく『それ以外の”なにか”がその病気の原因になっていること』の可能性を十分に排除えきれば』いいわけだ。
なんらかの反証が成立するまでの間、この仮説は定説であるし、それに基づいた対処法、例えば『HPV検査の子宮頸がん検診への利用』『HPV感染病変である高度異形成を治療することによる子宮頸がんの予防』『HPVワクチンによる感染予防と異形成・がん予防』は、それぞれ独立してその有効性が確認された上で有効であることに変わりはなく、多くの人の健康を守ることになる。
HPVが分離・単離されたのか?その単離されたHPVを使って子宮頸がんが再現されること(コッホの原則を満たすこと)はどうでもいい🐰
では、コッホの原則によらず『ある病原体が特定の病気の原因であるとその因果関係を示す』にはどのような方法があるのか?を示すのが一連のレターの目的で、今回も血清学的手法を用いたものになる。HPVへの道のりは遠いが、着実に土台は形成されつつあるよ🐰
前回は『HPVの存在証明⑤免疫学の登場(B型肝炎ウイルスの存在証明』ね、ダイジェスト版ははこっち(X・ツイッター)。
今回は『伝染性単核球症』。
ここの話で面白いのは、EBV (エプスタイン・バールウイルス)が伝染性単核球症の原因であると「コッホ・ヘンレ」の法則を満たさずに示したのが「コッホ・ヘンレ」の法則を提唱したヘンレ自身の孫夫婦であったこと。じいちゃんも嬉しかろうな🐰
行ってみましょうか🐰
毎度、🐰さんの専門からは外れるので、訂正などがあると勉強になるわ