HPVの存在証明⑤免疫学の登場(B型肝炎ウイルスの存在証明)
『微生物と病気の因果関係』をコッホの原則に基づいて検討していく過程で
①濾過滅菌できない(非常に小さい)感染性病原体として
②純粋培養で増殖・ふやすことのできない病原体として
ウイルスという概念が確立されていった(前回までの話はこちら)。
③感受性のある実験動物がいない場合、動物実験で感染性・病原性が確認することはそもそも不可能だ。
感受性をもつ動物がいないこと・感染しても病気として発症するのが極一部であること・感染から病気としての発症までの期間が実験で示すことのできる範囲を超えていることが、病気とウイルスの因果関係を示すことのハードルとなった。コッホの原則に示された方法とは違ったやり方で『そのウイルスがその病気の原因でないのではないか・他に原因があるのではないかという反証』を抑えて、そのウイルスと病気の因果関係があるということの妥当性を示す必要がある。今回は、本格的に分子生物学が登場する以前・ウイルスの本体であるウイルスゲノム(核酸そのもの)の配列を扱うことができる以前の話になる。人痘や動物・植物(タバコモザイクウイルスとかそう)をホストとするウイルス性疾患など、濾過性病原体として(見えないけど)感染性・病原性が確認されているものは既に実験的に『ウイルスとしての存在』と病原性がわかっていた。それらのウイルスとはまた一つ違った方法がいる。
抗体とそれに対応する抗原の発見
副題を免疫学の登場としたが、ウイルスの病原性に関する部分だけに絞って話をする。それだけでシリーズが成立してしまうから。
ある病気(感染症)に罹った人が2度と同じ病気に罹らないこと(免疫)は経験的に知られていて、天然痘に対して人痘法による免疫成立を狙った試みは古くから行われてきた(ワクチンの先駆け)。人痘は天然痘そのものであるから、接種した場合の重症化リスクが高い。自然感染よりリスクが低いとすれば、接種時のウイルスの量(感染する細胞数)が自然感染より少ない・制御できることによる感染から・病原性の発揮・免疫応答の誘導のダイナミクスが感染制御の点から有利なことになるだろうか?