誰がHPVワクチンを接種するべきか(1)なぜ定期接種は女性だけなの?
”高リスクHPVが感染することによるHPV関連がん”や”HPV6/11が感染することによる尖圭コンジローマ"は、基本的に男女関係なく発症する。当然、男女双方にとっての健康上の問題だ。しかし、感染部位によってがん・前癌病変の発症率が異なり、感染した場合の発症リスクが子宮頸部が他の部位を圧倒するため、男女間で感染した時の負担に不均衡が存在する。
再来年の3月までは1997年度生まれ以降の女性であればHPVワクチンの接種対象になっている(3回接種に普通6ヶ月かかるから計画的によろしく)。これは2013年以降、国の定期接種ワクチンであったにも関わらず『積極的勧奨』を控えていたことに対する措置になる。『定期接種(法律で接種することが勧められているワクチン)の対象であったのだが、積極的な勧奨を控えていた為に、接種の機会が与えられていなかった』ということであり、2013年4月より前に定期接種ではなかったのだから、それ以前の人は対象になっていない。
期間限定で接種対象が拡大されている為に勘違いしやすいが、HPVワクチンの対象(原則費用を地方自治体が負担する)は小学校6年生から高校一年生までの女性で、標準の接種年齢は12歳。学校集団接種など接種の機会は設けられておらず、現実的な実施上の問題で小学校6年生から高校1年生までと幅が与えられているのだけど、推奨の接種年齢は12歳。大事なので2回強調した(こっちを参照に)。
一方、
HPVワクチンは45歳までなら有効である。
と聞いたことがあるだろう。これ自体は正しい。さらに
男性にもHPVワクチンは有効だ・利益がある。
これも異論はない。
では、なぜ現状実質的なHPVワクチンの対象は中学校1年生(運用上広くなってはいるが)で、しかも女性のみなのか?男性に拡大されたとしても、中学校1年生が標準の接種年齢で20代以降に公費負担で接種されることは考えにくい(期間限定でやってほしいが🐰)。
国のワクチンプログラム、国民の健康上の利益が大きいとして行政が費用を負担する形で接種対象になっているのは、HPVワクチンを接種しても良さそうで効果のありそうな集団に対して、あまりにも限られたものになっている。なぜだろうか?
今回は、対象年齢・両性を対象とすることに関する議論の前段階として、なぜ現状女性だけを接種対象としているかを中心に説明する。
女性を守る為に男性が接種する必要も、男性を守る為に女性が接種する必要もない
ワクチンを接種したら、接種した本人が守られ利益が発生する。まずこれが基本だ。先行国でワクチン接種集団の子宮頸がんが激減(12歳で接種すれば、ほぼ発症していない)しているが、これは”女性のみ”の接種で達成されている。現在までHPVワクチンは非常に優秀であることが確認されていて、10年以上たっても実質的なブレイクスルー感染は発生していない(追加接種が検討されない理由)。
男性への接種を呼びかける時、
ワクチンを接種するとパートナーを守ることができる。
と特に強調されることがあるが、これは正しく理解されていない。正しくはワクチンを接種すると
『次に持つパートナーから自分が守られ(感染せずキャリアにならない)、次の次のまだ知らないパートナー(もしワクチンを接種していないのなら)を守ることができる。
男性がパートナーを守れるとすれば『初交前にHPVワクチンを接種して、将来ワクチン未接種のパートナーをもった後に、別のワクチン未接種のパートナーを持った場合』に意味がでてくるだろう。ざっくり目の前にいるパートナーに対しては関係ない。ワクチン接種までに性的接触があったのなら、その関係においてはワクチンの利益はない。
韓国のドラマでこの様なシーンがある。HPVワクチンの啓発としては素晴らしい…
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- なぜ女性が優先されるのか
- ワクチンの供給量はどのくらいあるの?
- ワクチンは買えるところに供給される
- まとめ
- 次回は、誰がHPVワクチンを接種するべきか(2)なぜ定期接種は中学一年生なの?大人は意味ないの?
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