HPVに感染することとHPV感染症にかかることは違う

HPV検査単独法検診導入によって初めて、感染すること自体が感染症として扱われることになるのだが🐰『準備はいいか? 俺はできてる』
アマミノクロウサギ(Amamino_Kurousagi) 2023.11.20
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感染と感染症は異なることはいいだろうか🐰

細菌やウイルスなどの病原体が、空気や水などの身の回りの環境を通したり、または動物や人との接触を通したりして、人の体に入って増えることを「感染」と言います。こうした病原体に感染して起こる病気のことを「感染症」と言います。
感染症について知ろう!(文部科学省)

①感染と感染の結果『病気』や『病態』が起こるとこととしての②『感染症』の違いで、病気や病態を起こすことのできる性質ことを③『病原性』という。

感染・病原体の病原性・病原性の発揮としての感染症

このことは日和見感染や常在菌のことを考えればその違いがわかるかな🐰

・日和見感染・感染症

免疫システムが正常である宿主(ヒト)に対しては感染しない・病原性を発揮しない(感染症を起こさない)病原体が、宿主の免疫システムが弱っている場合に感染や病原性を発揮することによっておこる感染症のこと。

・常在菌、常在ウイルス

ヒトの身体に存在する微生物・ウイルスのうち、多くの人に共通してみられ、病原性を示さないもの。

簡単には『感染する・していること』と『病気になること』は別だということだ。

 ここまでは細菌学やウイルス学、感染症学をかじったことがあれば当然知っているだろう。『Host-parasite/microbe/virus Relationships』として概念化されているし、一般的知識と言ってもいいかもしれない。

じゃ、次『病気になること・感染症は検査や医療によって作られることもある』はどう?🐰良い・悪いの問題ではなくて医療上の必要性・意味としての病態は、医療の考え方・その病原体に対する対処法で変わるって話。

HPV感染・感染症の違いを見てみよう

具体的な例をあげて見てみよう🐰

これまでに400種類以上のHPVが発見されている。ヒトは誰でも何(十)種類かのHPVに感染していると考えていい。多くのHPVは正常な免疫を持つヒトにおいて病原性が確認されていない。つまり、一般のヒトにとって、大部分のHPVは感染しているが感染症としては存在しないと言える。

 臓器移植を受けた場合など、免疫が抑制されたヒトにおいて、この様な普通は病原性を示さないHPVが、多発難治性疣贅として発症することがある。これはHPVの日和見感染症として解釈ができるだろう。

ツリーマン症候群(wikiにリンクしたが内容はデタラメだ。注意🐰)も、免疫遺伝学的にHPVの感染をコントロールできない背景があるときに発症する感染症だ。ツリーマン症候群を起こすことを知られているHPVは一般集団からも検出され、その検出頻度は高く常在ウイルス叢の構成要素とも言える。でも、病原性が発揮されることはない(皮膚癌の原因としての役割について長い論争があるが)。感染はしているが感染症ではない例だ。

通常の良性の疣贅・コンジローマなどは、特定のHPV感染した場合のHPVの感染症だ。型ごとにどこに感染しやすくて感染病変(イボ)を作りやすいかが決まっている。性器に感染しやすく・イボを作る原因であるHPV6/11型は厄介な存在だ。この場合は良性のイボを作る性質が病原性であり、イボができた場合に感染症になる。

 なぜクドく記述したかと言えば、この様なイボを作るHPVでも、感染している(調べれは検出できる)のに感染病変は形成しない例が多数あることがわかっているから。感染してることと感染症として発症することは別であるのはここでも同じだ。症状(感染症としてのイボ)がない限り、感染していること自体は問題とならない。わざわざ検査をして感染している人を見つけに行くこともしない。HPV検査をすれば、コンジローマ罹患者の少なくとも数倍程度HPV6型11型が陽性となる。しかし、感染自体は医療上の問題とされず、これも感染はしているが感染症としては扱われない例だ。もちろん感染源とはなっているのだがどうしようもない。治療法もないし🐰

感染するとがんの原因となる様なハイリスクHPVを見てみても事情は基本的に同じだ。まず感染自体は非常にありふれている。このレターにも説明したが、性的経験のあるほとんどが感染してるのが実際で、そのうち一部のヒトで癌として発症している。大多数の感染に対して、症状としての『がん発症』はごく一部になる(それでも数%になる)。これも感染してることと感染症として発症することは別である例になるのだが、ここで『病気になること・感染症は検査や医療によって作られる』が出てくる。

ここからが本題ね🐰

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続きは、2145文字あります。
  • 子宮頸がん検診はがん検診ではない
  • HPV検査単独法検診はHPV感染症の概念を変えるものだよ

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